「誘拐!? … いや誘拐なら警察に行った方が早いんじゃ…」








俺は普通にそう思った。











「いや、そうしたいのはやまやまなんだがよ… ウチの娘はな 家の金庫から1000万持ち逃げしてな… しかも…」







戸澤は言葉を濁した。






「しかもなんすか?」





そう俺が問い詰めると






「こっから先は 場所を変えて話そう。今時間あるかい?」






と聞いてきた。







「あ はい 練習も終わりましたし…」






俺は関わっちゃいけない…と思いつつそう言ってしまった。









「よし、飯食えるか?」







時刻はだいたい午後9時過ぎぐらい。


俺は腹がペコペコにすいていた。







「あ じゃあお言葉に甘えて…」









「悪いな。 おい!!車まわせ!!」








戸澤が護衛にそう言いつけると 2人の護衛が一瞬のうちにいなくなった。







“手下”2人はそのまま帰り、俺は戸澤と車の方へ歩いた。







この男と並んで歩くと人がとにかく道をあける。







とっぽい兄ちゃんもまるで前から“ライオン”が来たかのようにササッと道をあける。







とにかく 凄まじいオーラを放っているのだ。










繁華街を抜けたあたりの銀行の前に“いかにも”な車が停まっていた。







「うわ ベントレーだ‥」








「おう 1500万ぐらいしたかな」








どうやらこの“フィクサー”は凄まじい金持ちらしい。









ゴツすぎるベントレーに乗って20分ぐらいだろうか。








麻布にある高級焼肉店に着いた。








すると戸澤が



「今から息子よぶからよ。」












「え!?〇〇さん来るんですか?」






俺は意表をつかれた。










「この件はよ、ホント俺達の出る幕じゃねえんだよ。 とにかく話を聞いてくれ。 よし、入ろう。」



戸澤は少し疲れた表情を見せた。



どうやらこの男の娘の事件はヤクザにも警察にも委ねられないらしい。



俺は大金よりも真実を知りたくなったのだ。












続く。