その男は戸澤(仮名)と言った。










戸澤は太い指で太い葉巻を持ち、俺に言った。










「高瀬くんよ… 君に頼みがあるんだけど 聞いてくれないかな?」










「え? 頼みですか? 何ですか?」









男の急な申し出に俺は戸惑った。









申し出というより急な展開に…









ヤクザとは関わりたくない…




だが〇〇〇さんのオヤジさんだ…






様々な事が脳裏を駆け巡る。









「500万、君に払うよ。 もし君がやってくれるならな。」











「500万!?」



俺は思わず絶句した。









一体何をやらせようとしてるんだ??







「頼みって 何ですか? 犯罪系じゃないですよね?」




俺がそう訪ねると 戸澤は首をゆっくり横に振り











「犯罪系? いやそれはない。 ただ…」


とつぐんだ。









「ただ 何ですか?」










「君を待っているのは犯罪者だ。」









「犯罪者!? いや‥ それなら下の人間にやらせれば…」






俺は真っ当な事を言った。




上のトラブルに下が動くのは当たり前だ。









「君の言いたい事は分かる。だが後々話すがそれができないんだ。だからこうして頼んでるんだ。」








戸澤の太い声が少し細く聞こえた。









「一体何をやれって言うんですか??」






俺は正直迷った。



大金だからだ。






500万はあまりにも大金だ。














「… ある人間を連れ戻してほしい。」





戸澤が言った。









「ある人間??」









意味が分からない。








「ある人間て誰ですか?」








そう聞くと戸澤が護衛に合図をした。







護衛が何かを戸澤に渡してまた“定位置”に戻った。





戸澤が持ってこさせたもの。 それは美しい女性が映った1枚の写真だった。








「娘だ。先日…誘拐されたんだよ。」






















続く。