イタリアのマフィアのような男は俺の名前を確かに言った。
「高瀬大樹だろう?」
そして ニヤリと笑った。
「実はな、俺の息子も格闘技をやってるんだよ。」
男ははにかむように言った。
「え… 総合ですか?」
俺は気になって仕方なかった。
「君と一緒だよ。 名前ぐらい聞いた事はあると思うがな。」
男はそう言うと護衛の男に何やら合図した。
護衛の男が近づき、マフィアのような男にデカい葉巻を渡し火を付けた。
まるでゴッドファーザーのアルパチーノだ。
男はゆっくりと口から煙を吐き出した。
俺は一瞬、その姿を見て かっこいい…と思ってしまった。
いや それよりも息子だという総合格闘家の名前が気になる。
男は
「息子の名前知りたいか?」
と俺に聞いてきた。
俺は「はい、教えて下さい。」
と素直に返事をした。
まるでたわいもない事に興味を持ち、学校の先生に答えを即す子供のように…
男はまた煙を吐き出した。
「フゥ―……… 俺の息子の名は…… 〇〇〇だ。」
「ええっ!? 」
俺は思わず大きい声を出してしまった。
「〇〇さんのお父さんなんですね…」
その選手は俺も数回だが一緒に練習をしたことがある。
正直驚いたが この男が俺に自分の息子の事を明かした理由が明らかになっていく。
そして この男が カタギの俺にある頼み事をしてくる。
この出会いで俺は普通では経験できない事を体験する。
若者の闇は 大人の闇を凌駕しかけていたのだ。
恐ろしい事実を知る事になった俺は完全に巻き込まれる(コラテラル)のだった。
続く。