その“太い”男は 一歩一歩 地面を踏みしめるように俺の方へやってきた。
ズイッと顔を近づけ
「兄ちゃん。 強いのはいい事だけどよ‥ヤクザなめちゃダメだなぁ」
と言った。
俺は
「いや 別になめてませんけど‥」
と返すしかなかった。
今時自分でヤクザを名乗るのも珍しかった。
ヤクザと名乗った時点で脅迫罪になると聞いていたからだ。
男はギチギチのスーツを身にまとい凄まじいオーラを放っている。
“俺より偉い奴はいない”
“俺より悪い奴はいない”
とでも言いたそうな振る舞いだった。
「兄ちゃん 格闘家だろ? 打撃か? 総合か?」
男は格闘技を知ってるようだ。
嘘をついても仕方ないと思い
「総合です。」
と答えた。
すると男はスーツからまた名刺入れを取り出した。
そして一枚の名刺を俺に差し出した。
「ん 俺の名刺だ。」
?
その名刺に書かれていたのは男の名前、組の名前と肩書きだった。
そして男は意外な言葉を口にした。
「兄ちゃん 高瀬大樹だろ? よく知ってるよ。」
「えっ!?」
俺は思わずそう返した。
「なんで知ってるか教えてやろうか?」
男と俺には意外な共通点があったのだった。
続く。