「お前まで巻き込む訳にはいかないよ…」





「何言ってんすか! 俺は先輩が拒否ってもやりますよ!!」





「……… わかった わかった。 ノリがあんな事になって…
うん。 俺らもお前がいれば心強いよ…… でもな アイツを殺すのは俺だ。」




ヒロは大事件を起こしたノリのためにと、 俺達の“復讐”に加わる事になった。




ヒロと電話を切り、アキラにその事を報告した。





アキラも初めは反対だったがなんとか納得してくれた。





そして俺達は“決行”の日を定めた。




まず プリペイド式の携帯を先輩の“つて”で買い、すぐに連絡を取りあえるようにした。




携帯はユミにも持ってもらい万全な体制を整える。





学校の裏にプールがある。

プールは民家からも学校自体からも離れているため適地だった。





拓郎先輩に再度拳銃の使い方を聞き、“気付け”の言葉をもらう。








やるしかない。








土曜日の夜、10時に俺達は集まった。




まず最初に来たのは 俺とアキラだった。





「ついに来たな‥ 」
アキラが言った。






「ああ… きたな…
必ず成功させるぞ。」





とその時現れたのはヒロだった。




「先輩、お疲れっす。」





ジーンズを腰で履き、流行りのTシャツをルーズに着こなしている。






「ユミ、来るかな…」

俺はユミが本当に来るかどうか不安だった。






プールの近くの茂みに潜んでいると足音が聞こえてくる。







「… ユミだな…」
俺はすぐにわかった。






「ごめんなさい。遅れて…」






アキラが
「いんだよ 来てくれてありがとう。」
と言うと、ユミは軽く微笑んだ。





「さあ 斉藤に電話するか」

と俺が言うと、ヒロが

「先輩、殺す前に アイツ ふくろにしていいすか?」

と言い出した。




ヒロの気持ちを考えると何も言い返せない。




「ああ とことんやれよ。」
と俺は“OKサイン”を出した。






「ユミ、斉藤に電話して 話しがあるって言ってくれるか? うまく色恋使っておびき出してくれ。」

アキラが“トカレフ”を片手に持ちながら言った。





「うん…やってみる。」


ユミは声も聞きたくないだろう。





ヒロは 座って一点を見ている。
きっとノリの事を考えてるに違いない。




アキラは“殺意丸出し”の目つきをしている。 そしてその裏には大親友のノリへの気持ちが見え隠れしていた。






そして俺も この殺人を“天命”と捉えていた。




ゴキブリやハエを殺す事となんら変わりない…

そういう気持ちにすぎない。









そして……


ユミが携帯から電話をかけた。




………






「もしもし… 杉山(仮名)ですけど… … あの… 話があるので 会いたいんです。 学校のプールの裏で待っています… 」









ユミが俺の方を見てうなずいた。






「どうだった?」

アキラが聞いた。






「うん… 来るって…」






「ヨッシャアッ!!!」

ヒロが叫んだ。





「よし、プールの裏に行こう。

まず アイツをボコボコにして トドメで撃ち殺す… いいな!?」
俺がそう言うと、皆がうなずいた。






プールの裏は田園が広がりその周りを森林が囲っている。

拳銃の音は響くだろうが、警察が来るまでにはだいぶ時間がかかる場所だ。





それぞれが身を潜め、斎藤を待つ。




30分しないくらいに車の音が微かに聞こえた。






「来た!! 」

アキラが小声で叫んだ。






俺達の心臓は互いにわかるくらいに鼓動が早くなっていた。






ユミの携帯が鳴る。



「はい… あ プールの裏にいます…」






ついに斎藤を殺す時が来たのだ。



生徒を脅し、強姦を重ね、売春を強要。 そして死まで追い込んだ悪党。




コイツには死こそ相応しい。




時は来た。








「ジャリッ」




斎藤が来る…






俺は手に持ったトカレフを強く握りしめた。






これは神の制裁だ。




この悪党の死も、“神の名の下”だったら 凄惨な死体も 厳かなる“一枚の絵”となるに違いない。




俺の心に、悪魔が舞い降りた。










続く。