床に広がるおびただしい量の血…






「ノリ… おまえ…」

俺はノリに近づいた。






「キャアアアアアッ」



いたるところで悲鳴があがる。






「…大樹… 俺やっちまったよ…」

ノリは錯乱しているようだ。



他の教師達が駆け寄る。





「おい!!風間(ノリ)っ!!!何やってんだああっ!!!」




ノリが包丁を床に落とした瞬間、教師達がノリをつかみかかる!!






ノリは無抵抗なまま取り押さえられた。





渡辺はピクリとも動かない。





ノリが教師達に取り押さえられながら、俺とアキラを見て叫んだ。





「“あの事”は言わねーから! 後は頼んだぞ!!」











やがて聞こえるサイレンの音。






渡辺は即死だった。





ノリはパトカーで連れていかれた。






アキラが目に涙を滲ませている。





アキラとノリは、何の偶然か 小学生の時からずっと同じクラスだった。






全てのクラスが自習になり、パニックを起こした生徒もいたため、全員下校となった。




学校には数台のパトカーが止まっていた。








帰り道、アキラが俺に言った。

「大樹… 2人で大丈夫かな?」






「うん… やるしかねえよ。 ノリ抜きでも。」






ユミにおびき出してもらう作戦をもう一度練る。






夏の蒸し暑さえもかき消すほどの衝撃だった。




ノリはこれから大変だろう。





ノリは身を犠牲にして、自殺した吉川沙織の敵をとった。




俺達が斎藤を殺さなければノリが報われない。





「アキラ…絶対やるぞ。」






「ああ…」







俺達は別れ家に戻った。





親に事情を話すと絶句していた。



まあ仕方ない。こんな事が一見平和に見える学校で起きたのだから。






家で自分の部屋にいても落ち着かない。



ここのところ、ストレスは溜まる一方だ。





テレビのバラエティーを観てもどこか笑えない。




「ノリんチの母ちゃん可哀相だな…」




悲しい出来事に憎しみは湧き出る一方だ。



憎しみは荘厳な膂力となり 俺は何かに背中を押され、電話をとった。





と、子機をとった瞬間、電話がけたたましく鳴った。






「うおっ ビックリした…」





通話ボタンを押す。





「もしもし?」






「先輩。ヒロですけど。 今、大丈夫っすか?」





電話をかけてきたのは、ノリの弟 ヒロ(仮名)だった。






「おお ヒロ… ノリは?」






「今、取り調べ受けてます。
先輩、 兄貴 なんで渡辺やったんすか?」






俺は一度思いとどまったが ノリの家族の事を思い全てヒロに話した。






「先輩、……

俺兄貴の敵とっていいすか?」



ヒロは年下の中でもかなり気合いの入った“ワル”だ。

同じ学年でヒロより悪いヤツはいない。
教師達からも目を付けられる存在だった。




「俺も、 斎藤殺しに加えて下さい。」









事態は急展開を迎えた。









続く。