俺達は拓郎先輩に連れられ 近くの喫茶店に入った。










「先輩… なんか変わりましたね‥」

俺は拓郎先輩の変わりように驚いた。

俺達よりも何周りも年上のような落ち着き払った、尚かつ“厳つい”オーラをまとっていた。






「まあ 俺も苦労してっからな~」
と拓郎先輩が言った。






するとアキラがいきなりかしこまって
言った。


「拓郎先輩! 実はおりいって相談があります!」








拓郎先輩は

「おいおい、なんだよ急に。 なんかあったのはわかるけどよ…
なんだ喧嘩か?」








「いえ… 実は…その… えっと……」







アキラがしどろもどろになった。







なかなか言い出せないアキラを見て俺は勇気を振り絞った。







「先輩!! 銃を売ってください!!」





俺は勢いで言った。





とにかく時間がない。
鬼畜にも勝る大人達に“制裁”を加えないとまた被害者がでる。


そしてユミの事…


俺に躊躇する理由などどこにもない。







「銃!? ハジキか? おいおい 何かと思ったらとんでもねぇコト言い出したな…」







俺達は今までの“いきさつ”を全て拓郎先輩に話した。











「……毒殺って 保険金殺人みてーなコトやってんなぁ… しかも失敗かよ!」


と拓郎先輩が笑った。






「いやあ ただのビンに“劇薬”って書いてあったんでちょっとあれかなあ、と思ったんですが… たぶん誰かが自分で飲みたくてビンに入れてたんだと思います…」



とノリが言い訳をした。

ノリは自分の発案が失敗して実はちょっとショックのようだ。







「んー だいたい事情はわかった。 まあそいつらを殺りたいんだな? でもな…」

拓郎先輩が言葉に詰まった。








「やっぱり100万円とかするんですか?」

俺は身をのりだした。









「いや、 金よりも…うーん…… 仕方ねぇな… 俺が正義を語るのはナンだけどお前らの正義心は買うよ。
だけどな 組長に直にお願いしないとならねぇな…
お前ら 会って話す度胸あるか?」

拓郎先輩がそう言って、俺達をギラッと睨んだ。








ノリが

「 組長すか! 組長って一番怖い人ですよね?」








アキラがすぐに

「はい、それで銃が買えるなら! お願いします!!」

と返した。








拓郎先輩が

「よし、 じゃあお前ら 事務所に来い。 組長、今なら事務所にいるから。 3人で頭下げてみろ!」







話はとんとん拍子に進んだ。






ヤクザの組長なんて なかなか会う機会なんてない。



とんとん拍子に話は進みはしたが、3人とも足が震えるほど緊張していた。






そして……









喫茶店から歩いて5分くらいの場所に事務所はあった。


事務所の前にはベンツやら高級車が何台かとまっている。







「上だ。 ついてこい。」








比較的新しいビルに入り俺達は拓郎先輩の後を追う。







そしてドアの前に着いた。







ドアの前には2人 若いヤクザが立っていた。






「ご苦労様です!!」



2人の若いヤクザが拓郎先輩に頭を下げた。






「拓郎先輩ってすげえんだな…」

と心で呟いた。







拓郎先輩が 大きな声で


「失礼します!!!」


と言いながらドアを開けた。







まず 目に入ったのは部屋の右側に飾ってある日本刀。


そして、虎の絵が施された立派な掛け軸。





厳つい机




厳つい椅子……







厳つい椅子に座っていたのは30代後半の、一見ヤクザに見えない、男前の人間だった。






その組長の名は三咲京助(仮名)。






俺達はその若い組長の“ある部分”を見て息が止まった。






その男の両手の小指が“ない”。






ヤクザの世界では“けじめ”で指を包丁で切り落とす事があるという。







漫画でみてきたものが今、現実に目の前にある。





その組長は俺達を見て


「なんだ拓郎。こいつらヤクザにでもなりたいのか?」





と、外見通りの声色で話した。







「いえ、オヤジ。 こいつら自分の地元の後輩でして… 頼みごとをしてきたんです。 オヤジの許可が必要なんで直接連れてきました。」

と拓郎先輩が言った。





「なんだ なんの頼みごとだ。俺達ヤクザに頼みごとってのはロクな事じゃねぇだろ」








拓郎先輩が
「おい お前ら 自分でお願いしてみろ!」


と俺達の方を見た。






ヤバい……





緊張して何を話せばいいのか…





俺は少しパニックになっていた。




その時ノリが叫んだ。








「銃を売ってください!お願いします!」

と頭を下げた。








組長は何も動じない。







重たい空気が流れる。





まるで時間がこの部屋だけゆっくりと進んでいるようだ。






怒らせたか?







組長の目を見れない。






やはりそれだけの威圧感がある。







拓郎先輩も黙っている。








空気が張り詰めて絶頂にたどり着いた瞬間…





組長が口を開いた。








俺達は“人を殺める”覚悟がある“ふり”をしていたのを思い知らされる。






殺意は人格を変える。






悲しみも人格を変える。





復讐に走った人間達にかぶさる運命はそれはそれは “過酷”そのものだった。








因果よ… 廻れ。










続く。