弱みにつけこまれ、性行為を強要されたユミ。






アキラと2人で





「殺そう」






と言ったのは 決して軽い気持ちではなかった。






その日、俺は何も手がつかなかった。





家の飯ものどを通らない。




部屋でテレビを見ていても、何も頭に入ってこない。





夜 9時を回った時ぐらいに 母親の声がする。






「大樹!電話よ!」





俺は返事をする気力も起きなかった。





階段を下り 母親から受話器を渡される。





「もしもし…」






「おお 大樹か アキラだけど」





電話の主はアキラだった。





「おうアキラ、今日は… まいったな…」





アキラは



「そうだな… でもよ一番辛いのはユミだぜ」





「ああ… そうか」




「ところで… 」




アキラがなかなか次の言葉を発しない。






「ん? どうしたよ」







「マジで、やるか?」





俺は




「やるって 殺すって事か?」





アキラが





「そうだよ。 俺はおまえがやるならやるよ。 俺…」






「アキラ、ユミが好きなんだろ?」







「… ああ、 でもよ… 大樹もだろ?」





「ん… 好き、 好きだな‥ うん。」





アキラはわかっていた。





いや、お互いユミの事が好きなのを知っていたのだ。







「大樹、 やるんだな?」



アキラが言う。






「…… うん… やるしかねえだろ。 殺すぞ。 とんでもない目に合わせてやるぞ あのデブ。」






「決まったな 」




アキラの声が少しだけ明るくなった。






「よし、方法を明日までに考えておこうぜ。 完全犯罪を実行するんだ。」





俺達はもう周りが見えなくなっていた。



それぐらい心に傷をおったのだ。





電話を切り、また思いにふける。





ユミが斉藤にレイプされてる姿が頭に浮かぶ。





そしてそれは、完全なる殺意に変わり、殺意は増大していった。





「俺の大事な人が…」




ショックを隠しきれるわけがなかった。




「はあ… 殺すって言っても どうやって…」





俺は何も思いつかないまま夜の静けさに身を任せ 眠りについた。















次の日 学校に行くと 一時間目が自習だった。




ユミは来てないようだ。





アキラが俺の背中を叩く。



「おい 大将! 考えてきたか?」





俺は




「いや、わりぃ あのあと寝ちゃったんだよ…」





アキラが呆れた顔をして




「ったく。 まーいい。 とりあえず ノリに報告しようと思うんだけど。」




「ああ そうだな おい、ノリ!!」





ノリはクラスの女子達と楽しそうに話していた。




「なんだよー せっかくサキといい感じだったのによー」




アキラがノリの頭を小突く。




「馬鹿、 真面目な話しだ!」





「なんだよ それ 駄菓子屋つぶれた?」




俺はノリに一部始終を話した。




ノリの顔色が変わるのがわかった。





「……マジかよ… アイツ… 許せねぇな!」





アキラが言う。


「ああ 許さないよ。 だから ……」




「?…だから?」






「斉藤を殺す事にした。 2人で決めたんだ。」





ノリが目を丸くした。



「殺すって マジで? 冗談だろ!?」





俺は



「いや 大マジだよ 完全犯罪をやる。 あの腐った野郎は生かしておけねぇだろ!?」





ノリが


「殺すってどうやって殺すんだよ。 警察だって馬鹿じゃねぇだろ?バレたら大変な事になんだぞ?」




「だからバレねぇようにやるんだよ!」

アキラが返した。






ノリは得意のギャグも出さないで何かを考えてる。




そして


「 仕方ねーな。 確かにアイツは生かしちゃおけねーしな…
OK! 俺 いい方法思いついたぜ!」






「なんだよそれ? 」




俺とアキラが顔を見合わせる。






「理科実験室にある、毒物をアイツに飲ませるんだよ!」






理科室には多彩な劇薬が厳重に保管されていた。





「…なるほど、ナイスアイデアだよ。 劇薬編やってみっか…」





まるで映画の役者きどりだ。




事の重大性よりも斉藤のしたことや、してきた事に対する憎しみが俺達を完全に麻痺させていた。







アキラが

「よし、今日夜 学校に忍び込むぞ」




とにかく劇薬を飲ませるシチュエーションよりも、劇薬を手に入れる事が先だ。





学校が終わり、夜の10時に集まり、俺達は学校へ忍び込んだ。





人を殺す… 罪深い仔羊達は精神を崩壊させないよう精神を麻痺させる。

麻痺した心は悲しみをも受け付けず復讐だけを吸収する。






「さあ 行くか」



俺がそう言い 3人は歩きだした。





そしてその夜の学校で



また信じられない光景を目にする事になる。





運命のイタズラか…



神のイタズラか…




俺達は大人達の深い闇と戦う事になった。




それは宿命だったのかもしれない。












続く。