後輩をかばった俺に近づいてきたIは




「ふん 後輩思いじゃねぇか てめぇちゃんとしつけとよな」



と言って 木刀を“連れ”に渡した。




俺は内心ホッとした。




Iが



「これからどうする?おまえら」




「???」





なんとなく何を言おうとしてるのかが解った。






「2人で30万な。」





7万死に物狂いでかき集め 後15万円。



「マジかよ…」



お先真っ暗だ。



15万は17のガキには超大金だ。




更にIは



「親になんて言うんだよ?」



俺の顔は鏡を見なくても 腫れてるのが解る。




後輩の方をチラッと見るとものを考えれる表情じゃない。




俺は


「喧嘩したって言います。」



と返した。





「おめーら チクリ入れたらこんなもんじゃ済まさねーぞ」




俺達はなすすべはなかった。



恐怖で覆われた人間は言いなりになるしかない。




Iも傷害と恐喝で捕まりたくないんだろう。




I達が帰って俺達は力が抜けるように座り込んだ。





駐車場に止まってる車のミラーを見ると左側の顔だけ“アンパンマン”みたいに腫れている。


Iが右ききだからか、左側だけ異常に“膨らんでいる”。




後輩の顔も酷いもんだ。





後で解った話しだがIも鬼丸さんには全く頭が上がらなかったらしい。




当時は鬼丸さんなんて雲の上の存在だ。



しかし、俺はこの数年先に鬼丸さんと出会う事になる。



この事は後ほど記そう。





腫れてる顔をさすりながら帰路につく。



「強くなりてぇ」




俺はこの頃から 異常な程に“強さ”を求めるようになった。



格闘技のビデオや雑誌を見たり ウェイトのセットを通販で買ったりした。





“上納日”は1ヶ月半後。




俺達は金集めに必死だった。




とにかくまともにこんな大金稼げやしない。



“悪さ自慢”はくだらない。


金はなんとか集まった。




「くだらねえな」




いきがったって所詮上には上がいる。




強い者に叩かれ弱い者を叩く。



ちっぽけな世界だ。



夢も希望もない。



俺は 日に日に 強さを求める。




仲間達とも付き合いがなくなる。




そしてある日の夜


格闘技番組がテレビでやっていた。




俺のくすぶっていた魂に火をつけた。




その試合は……








続く。