ホイスグレイシーとグラップリングマッチで戦う事が実現性を帯びてきた。



ホイス側が提示してきた額……


有り得ない金額だった。



「一億二千万円ふっかけてきました。」

マネージャーが苦笑しながら言う。



しかし 俺はすぐに悟った。



「勝てないのをわかってて 出すわけないだろうという金額を提示して 逃げましたね(笑)」



マネージャーも俺の意見に同意した。


恥をかくくらいなら試合はやるが、ファイトマネーはこれだけ出せ!
という事にして“逃げた”のだ。



別にホイスに文句をつけるつもりはない。

逃げたくなるくらいの差を彼は感じ取っていたはずだ。


強者は強者を知る。

“匂い”で俺のグラップリングの力量くらい 彼ぐらいの百戦錬磨の人間ならわかるはずだ。



「あーあ 気が抜けちゃいましたね」



チャンスは一瞬にしてスルーしていった。


クラブファイトはひとまず置いておこう。
事務所内でそういう方針になった。



となると


総合だ。


その頃 古傷が発症していた俺はあまりイケイケな気分ではなかったが チャンスは逃してはならない。


そんなある日


社長から連絡が入る。


着信を見ると10件も入っていた。



「うわ なんかあったのかな…」



俺がおり返そうとしたその時、社長からまた着信がきた。



「あ お疲れ様です。 スミマセン電話出れずに(泣)」


俺は何かを感じていた。


チャンスは去ってもチャンスはすぐにやってくる時がある。
チャンスは気まぐれだ。



社長から聞かされた話は 正にチャンスの再来だった。


総合の試合。


相手は日本でも有名な“あの”選手だった。




続く。