マネージャーが教えてくれた事。


それは


ショーンウィリアムスがクラブファイトに出ない、という事だった。


これで賞金首マッチは2試合になってしまった。


後はアマチュアの試合とヒップホップやレゲエダンサーの“催し物”だ。


自動的に俺はメインの重責を担う事になる。



ショーンの言い分は まだ試合が出来るだけの準備が整っていない という事だった。


社長はショーンへの接待費がかなり高額だったため、かなり怒られていた。



しかし来ないものは来ない。


俺は残念だったがショーンにはショーンの言い分があるのだろう……



そして 遂に試合当日を迎えた。



場所は渋谷のクラブ エイジア。

お客さんの入りもなかなかだった。


アマチュア選手もなかなか良い試合をする。


「おっ あの選手化けるな」


そんなこんなでレゲエダンサーの女の子達が会場を盛り上げる。


刻一刻と俺の試合が近づく。


今までこういうイベントでメインを迎えたのは初めての経験だ。


休憩をはさみ ついには賞金首マッチが始まる。 控え室のタイ人にコヒ選手がタイオイルでマッサージをしてあげている。
俺は何回嗅いでも、このタイオイルの匂いは苦手だ。


いよいよ キックマッチが始まった。

コヒ選手はこの若いタイ人を

「MAXに出てもいけると思いますよ」

と言っていた。


体もしまっている。



だが……



一般応募してきた空手着を着ている相手選手に苦戦している。



あきらかなスタミナ不足で 追い込んだ練習をしていなかったのがわかってしまった。

正直危ない場面もあった。

彼はラウンドが進むにつれフラフラになっている。

しかしタイ人特有の“ごまかし”で何とか引き分けに持ち込んだ。

100万円は守られたのだ。


試合が終わり 控え室に戻ってくるタイ人は、壁に寄りかからなければならないほど疲労困憊し階段を登ってきた。


コヒ選手が

「スタミナ切れましたね」

と言った。



賞金首は圧倒的な強さを見せなければならない。


俺の番が来た。 アップを済ませ 戦闘モードに入る。

様々な感情が頭をよぎる。

しかし不安はない。


俺の寝技は世界トップレベルだ。と心に言い聞かせ ガウンを身にまとい 入場曲がかかるのを待つ。


「初めは軽く様子をみよう」


相手とは体重差もあるし相手に少し花を持たせてあげようと思っていた。


先に相手選手が入場する。 西口プロレスの
アントニオ小猪木さんが相手の原井にビンタをする“パフォーマンス”をやってくれた。



そして 俺の名前がコールされる。


「賞金首 高瀬大樹選手の入場です!!!!!」

リングアナがコールすると



リンキンパークとJay.zのコラボレーション曲の フェイントが流れる。



俺はゆっくり ゆっくりと階段を下り、リングの方に向かった。




続く