コヒ選手とのボクシングスパー


俺にとっては総合をやる上で素晴らしい経験になる。



ジャブが速い。


「スパアンッ」


とガードの上からキレのあるジャブが入ってくる。


しかし俺もWBCランカーの内山高志の激速パンチを何回も経験している。


「うん 見える」



落ち着いてコヒ選手のパンチをかわす。


俺もパンチを打ち込み コヒ選手のバランスを崩す。


しかし決定打まではいかない。


コヒ選手はサークリングで上手く回ってくるからだ。


一進一退の攻防が続く。



しかし2ラウンドで“それ”は起きた。



ガードを低くしたところサークリングしきれず コヒ選手の強烈なフックをテンプルにもらった。


「 ガクッ」



膝の力が一瞬抜けた。


「うわっ やべっ」


パンチは強烈だった。



さすがK-1MAXで第一戦で戦っているファイターだ。


しかし俺も意地がある。

ロープ際に詰められた時ガードを上げ コヒ選手が打ってくるところにカウンターを合わせた。


これは内山高志が得意とする技術で ワザと相手に打たせ カウンターを取るテクニックだ。


周りが

「 おおっ!」


とざわつく。


俺はカウンターを何度か決め スパーは終わった。

しかしフックを効かされたのはでかかった。

K-1MAX日本王者は紛れもない“強者”であった。


コヒ選手がヘッドギアを取り

「ありがとうございました。 高瀬さん 目が良いですね!」



「ありがとうございます。 でもフック滅茶苦茶効きました(笑)」



K-1MAX日本王者とスピード勝負ができ、確実に経験値が上がった瞬間だった。


それからもコヒ選手とはスパーを重ねる事になるのだが後に彼は 日本王者に返り咲いた。
さすがである。



そのコヒ選手のスパーリングパートナーのタイ人選手とも練習した。

彼はクラブファイトの賞金首だ。






そして


クラブファイトの日が 近づく。


試合が近づくにつれ ファイターは様々な感情を引き起こす。



そんな時

やはりクラブファイトにも一大事が起きる。



それを聞いた俺は


「えっ マジすか!?」


と驚かざるを得なかった。


喧一さんが欠場になっただけでも大打撃なのにだ。


マイナスとマイナスが一緒になってもプラスにならない場合がある。

俺の知らないところで 神のイタズラではなく マイナスがマイナスを呼び込む事となる。


神は変わろうとしない人間には 寛容ではない。
人は前向きになってこそ物事を成功へと導く事ができる。

ツケを払うのは原因が必ずあるからだ。
マイナス思考の人間にプラス思考の人間は寄り付かない。

太陽と月の光は異なるのだ。


いや


マイナス思考の人間には月の光さえも届かない事をこれから知る。





マネージャーから聞かされた事は


俺のテンションを下げると同時に


緊張感を余計に高める事になった。



神はマイナスの人間には試練を与え続けるのだ。



続く