クラブファイトの記者会見。

俺は

重い口を開いた。



「えー プライドに出れなくなってから 色々ありまして 試合ができない状態でした。 明らかに圧力をかけたり 巧妙な事をしている人達がいます。 本当に残念です。」



社長が更に強く



咳払いをする。




名指ししろ という意味だ。



しかし 実際 名指しなどできない。


俺はマイケルムーアほど勇気はなかった。



「とりあえず 勝ってから言いたい事を言います。」



俺はそう答えた。




会見が終わり 社長に


「なんで 言わないんだ」


と言われた。



しかし実際 誰がどういう事をしてるかなどこの時点では100パーセントわかっていたわけじゃない。


とにかく会見は終わった。

ここで一つ付け足さなければならない。



俺や喧一さんの他に ショーンウィリアムスという ヘンゾグレイシーから“初めて黒帯をもらったアメリカ人”がクラブファイトに柔術マッチで出る事もほぼ決まっていた。


クラブファイトの前に
このショーンが日本にやってくるのだった。


刺激のなかった最近の練習に俺は色めき立った。

「どれだけ強いんだろう」



寝技は奥深い。 次から次へと新しい技術が発見される。



ショーンはホイスが桜庭さんと2回目戦った時、ホイスのスパーリングパートナーとセコンドをやっていたそうだ。



ヘンゾグレイシーの弟子と練習できるなんてなかなかない事だ。


ショーンは喧一さんがアメリカに行った時、ずっとショーンのジムでお世話になっていたらしい。


そして ショーンがついな日本にやってきた。


ショーンは本当に男前で、とても綺麗な彼女がいるという話も頷ける。



英語で


「はじめまして。高瀬です。」


と 慣れない英語で挨拶をした。


するとショーンは


「やあ 高瀬! 君の事はよく知ってるし 一度君の試合をライブで見てるよ。」


「え? いつの試合を見たの?」


ショーンと俺はある狭い会場で実はすれ違っていた。


これも“縁”だろう。

人は何かの因果で結ばれている。

必然は当たり前の如く 自身に降りかかるのだ。

ショーンは俺を観ていたというその時の試合で 一番俺の寝技に注目していたらしい。


「ショーン、 何の大会に来てたの?」



ショーンが言った言葉に俺は驚きを隠せなかった。


「え!? あの時いたの!?」


やはり人生とは驚きと必然の産物だ。





続く