話はさかのぼり プライド3で 俺がデビューした頃の事。

俺がエマニュエルヤーブローと戦った時、桜庭さんはカーロスニュートンを撃破していた。

当時は桜庭さんはまだ“ヴェール”に包まれており、ケイシュウカイ内でも

「どれくらい強いんだろう?」

という感じだった。


ある日 格闘番組の収録が決まり、俺と小路(晃)さん、桜庭さんと松井(大二郎)さんが出演予定だった。

収録の前日、久保社長が
「おい、 桜庭に 練習お願いしてこい。 小路と2人で行って来い。」

とおっしゃった。

久保社長も桜庭さんの実力を計り兼ねていたと思う。


収録が終わり

「桜庭さん、もし宜しければ 練習お願いしてもよろしいですか?」

とお願いした。

桜庭さんは

「ああ いいですよ。」
と言って下さった。


話はトントン拍子に決まり、高田道場に小路さんと出稽古に行く事になった。

当日、小路さんと待ち合わせ、東急池上線で高田道場に向かった。

「いやあ 桜庭さんどれくらい強いすかねー」
小路さんは

「どうだろうなあ」


2人とも

「何とかなんだろう」

みたいな空気だった。

俺も体重は軽かったが当時は下からあまりできなかったが自信はあった。

そして高田道場に着くと
桜庭さん、松井さん、豊永稔がいた。


「お願いします」


道場に入り着替えを済ませ、ストレッチを始めた。

桜庭さんと初めにスパーをしたのは小路さんだった。

俺は松井さんとスパーを始めた。


スパー中 桜庭さんと小路さんのスパーか気になり、チラッと目をやった。

「えっ…」


小路さんが桜庭さんに上から腕十字を極められていた。


「ビーーーーーッ!」


ブザーが鳴り 一本目が終わった。


松井さんと握手をして

俺は桜庭さんの方へ行き

「お願いします!」

と 頭を下げた。



当時のケイシュウ会は 立ち技(レスリング)からではなく膝立ちから寝技を初めていたので ちょっと違和感はあった。

しかし高田道場のやり方に逆らう事は出来ない。

桜庭さんは 物凄いオーラ というより、どこか“ひょうひょう”としている。


出稽古特有の緊張感は あまりなかったかもしれない。


「なんか いけそうだな」


俺は正直そう思った。


筋骨隆々ではない桜庭さんの姿も、その思いを助長させる事になったのかもしれない。


「ビーーーーー!!」


いよいよ桜庭さんとの初スパーが始まった。



そして、俺の“自信”は

完全に

打ち砕かれた。




続く