その時、時計の針が動いた。
「パンパンッ!!!」


彼はタップを選んだ。


「よっしゃ、ヤッパリ俺は強い



俺はその後も タックルを切りバックについて チョークやコムロックなど バンバン極めた。


五味選手は寝技が不得意なんだな と思った。
逆に打撃のスパーをやればボコボコにされていたろう。

その後やっても同じ展開。

逆に元気の方がてこずる。


練習が終わり どこか 落ち込んでるような表情の五味選手は、 “必要以上”に仲良くなろうとする気配もなかったが、
「お疲れ様でした」

とちゃんと頭を下げてくれた。

「また3人でやろうよ」
と言い 俺は2人と別れた。


そして何日か後 練習する事になった。

元気が電話で

「五味が大樹の事 メチャクチャ強いって言ってたよ。 ちょっとショックだったみたい」


俺はケイシュウ会で寝技が一番強いという自負があった。だからケイシュウ会がナメられないようにこういう時は全力で潰しにかかるのが流儀だ。
しかし あまりにも差があると “手を抜く”事もある。

俺は2回目の練習の時、五味選手とスパーする時手を抜く事にしたのだ。
しかしそれは勘違いを生んだ。

2回目の時 俺は彼を極める事はなかった。

彼は どうやらそれで満足してしまったようで

後に元気から

「なんか五味 もう大樹と練習したくないみたいだよ」

「ええっ!?」


お互い切磋琢磨して強くなれると思い始まった3人の練習会は たった2回で終わりをつげたのだ。

俺はガッカリした。 手を抜いたのがバレて怒って… だと思ったら 1回目はボコボコにされたけど2回目は凌げたからもういいや… というつもりだったらしい。
元気もサスガに苦笑していた。

そして月日は経ち 五味選手の試合を観ると やはり寝技が弱点のようだ。 強い選手と寝技のトレーニングを継続していない感じがする。
BJペンとの試合のリポートで、ある記者の方が
「五味は寝技の受けがあまりにも弱すぎるというしかない」
と書かれていた。

それはプライドでも戦極でも モロに出ていた。
俺もずっと打撃の練習をサボっていたのでよく解る。 試合前にちょっとやっただけじゃ意味がないのだ。

ディープ道場に出稽古した時 戦極で五味選手と試合が決まっていた北岡が
「高瀬さん 五味と組んだ事ありますか?」

と聞いてきた。

俺は

「お前が上になったらすぐだと思うよ」

と言った。

本当にすぐだったからサスガにビックリしたが(笑)

五味選手には五味選手の考えがあるんだろうが 寝技は寝技で強い人間にボコボコにされても食らいついていかないと、絶対に強くなれない。

俺も昔、桜庭さんと初めてスパーした時 “ボロ雑巾”にされた。

もう 「手も足もでない」 というのはこの事を言うんだなってくらい。

でも俺は諦めず桜庭さんにスパーをお願いして強くなろうとした。

だから距離も縮まっていったし極められなくなったからもういいや。なんてしなかった。 結果強くなれたのだ。

五味選手は北岡との試合前にグラバカに何回か行ったそうだが 試合前に何回か行ったところで何も変わらない。

コメントをくれた方がオレに五味選手のコーチをやってほしい と言われるのは客観的に見ても五味選手がグラップラーに弱いという事が解るからこそのファン心理だと思う。

オレも五味選手と練習したい。 五味選手の打撃テクニックは本当に凄い。 ボクシングをやるようになって彼の打撃の凄さが本当に解る。あれはハンパないよ。 間違いなく日本一だと思う。
だからこそ 寝かされた時の対処が必要だと思うし、オレも彼から打撃を教わりたい。
いや、何度も言うけど五味選手の打撃はヤバい。
プライド時代 ミルコに「クロアチアに来ないか」と誘われた時があった。(実現しなかった理由は後ほど)
五味選手もクロストレーニングをすればいいのに… と思う。

まぁ 縁があればまた練習する機会もあると思うが グラバカにはもう来てないし(笑)

誰か五味選手と練習させてくれ~(笑)
五味選手ファンの人五味選手に俺がこう言ってるとお伝えて下さい。



「お互いのために 一緒に練習しましょう」と。




次回は

桜庭さんとの衝撃の初スパーの模様を書きます。