会長に電話をいれた俺は、お世話になった挨拶だけでなく 会社に残っている 癌を 何としてでも取り除かなければいけない、と思い 覚悟を決めて電話をした。
勿論なんだかんだ言っても最後のけじめの挨拶はしなければならない。

電話をすると すぐに会長は電話に出られた。


「お疲れ様です。高瀬です。 この度は会社を出る事になりましたが、今まで大変お世話になりました。」

と言い、続けて 元空手講師の起こした“パンクラス”事件の事に触れ 核心に迫ろうとした。


ところが…… 返ってきたのは予想外の言葉だった。


「いや そんな事あるわけないじゃん!? 給料出して契約してるのに 試合をわざわざ蹴るなんて あるわけないじゃない?」

俺はこの時 驚嘆というのはこういう事を言うんだな… と思った。

ちゃんとした社会的な立場のある方が 事実を知ろうとせず、知るどころか否定から始める……
俺は本当にガッカリした。
一人の人間に対してこんなに落胆したのは初めてだった。

俺はずっと今まであった事を 会社を紹介してくださった方に話していたが その方も
「いくらなんでも酷いからちゃんと会長に話した方が良いですよ」
と言われていた。

しかし 何も変わらなかった。 変わるどころか話を最後まで聞いてもらう事さえしてもらえなかったのだ。

俺は これ以上話しても時間のムダだと思い。

「お世話になりました 失礼します。」

と言って電話を切った。

これでこの会社とは“終わる”事になる。

プライド時代は確かに自分で招いた事が原因だった。そういう痛い目に合うのも 自分が引き寄せてしまった事が大きい。
しかし第2章で書いてきた事は 本当に全て自分が招いた事なのか?

いや 違う。

悪い事が起きるのに、自分以外のおかしい人間達のせいで事が起きる事もあるのだ。

電車で痴漢に合う女性達は自分が悪いのか?

殺された人間が、全て殺された方が悪いのか?

自分以外の悪い人間により人生をマイナスにされてしまう事だってあるのだ。
毎回毎回、自分が悪かった… なんて言ってたら重度の鬱になるのは時間の問題だろう。


この格闘技業界にはこういう人間がまだいる。

ソイツらは 古い餌から新しい餌に狙いを定め、コソコソと生きているのだ。



マネージメント会社と別れ、俺はこれからの事を考えなければならなかった。

この辺りから 俺の人生が急速に目まぐるしい程に変わっていく。

芸能界のドンや久しぶりに再会するかつて戦った事のある先輩格闘家、凄腕のトップブッカーの方など……

人生は本当に楽しくて面白い。

仕掛け人の方もウハウハで喜んでるブログの続きは第3章で。


続く