試合がいい加減な人間のせいで流れたり、 知らないところでオファーが二回も断られていたり…

もう お先真っ暗と言っても過言ではなかった。
そんな ある日 元高田道場の浜中和宏(以下浜ちゃん)と練習し終わった後、彼がプロレスの試合に出ている事を知った。
その興行の名は
「上井ステーション」。元新日本プロレス社長の上井さんが興していた団体だった。

上井さんが新日本プロレスの社長を辞め、前田日明さんなどとビッグマウスラウドという団体を経て行き着いた団体だ。

俺は浜ちゃんに 「俺もプロレスやってみたいなあ」 と何気なく言ったのが始まりだった。

ある夜の日 浜ちゃんから携帯に電話がかかってきた。 そして浜ちゃんは上井さんと一緒に呑んでいたようで 俺がプロレスやってみたいなあというのを上井さんに伝えてくれたらしく
「今上井さんに電話かわりますね!」
そして
「もしもし、はじめまして上井です!」
受話器から聞こえてきたのは人の良さそうな感じのオジサンの声だった。
上井さんから 是非とも次の上井ステーション出ませんか!? とお誘いを受けた。

正直、この頃はまだプロレスに対して探求心はなかった。
小さい頃、ワールドプロレスリングというテレビで見てたくらいで 正直周りが騒ぐ程、プロレスを見ていなかった。
しかし 総合の試合も決まらず、何かの運命かもしれないという(笑)勝手な思い込みで後に快諾させて頂いた。
しかし全く興味がなかった訳じゃない。
俺が格闘技を始める前、パンクラスの鈴木みのるさんの試合をよくビデオで借りて観ていた。 その頃鈴木さんは総合からプロレスに戦う場を代えていらっしゃっていた。鈴木さんのプロレスの試合は夜中にテレビでよく観ていた。
やっぱり総合でも強い鈴木さんはプロレスルールでもカッコ良かった。

そんなこんなで プロレスをやる事になった俺。
その頃の会社というと 世田谷区に駅からメチャクチャ遠い場所にジムか出来、ニコラスさん達が練習を始めていた。 何故か小路(晃)さんも来ていた。 俺はプロレスを始めていたし、総合も「この会社じゃあ決まらないな」と先を読んでいたので 新しいジムには一度も行かなかった。
ただ ワタナベボクシングジムでのボクシングの練習や高坂さんのジムでの総合の練習は欠かさないようにしていた。
ボクシングは本当にハマっていて ジムの周りの選手や会長の勧めもあり、プロボクサーのライセンスを取る事になっていくのだった。


話は戻って プロレスデビュー戦。

個人的にも相手は誰何だろう?と不安もあった。
上井さんから何人か候補を挙げられていたのだが、その中に

「まさかこの人じゃないだろうな…」
という人もいた。

そしてある夜上井さんから電話をもらい プロレスデビュー戦の相手の決定を知らされた。

そこで聞かされた対戦相手に俺は驚きと興奮を隠せなかった。

「鈴木みのるさんに決定しました!」

俺はプロレスデビュー戦を あの鈴木みのるさんとやることになったのだ。
「えっ マジかよ。」

鈴木さんとは 昔、コンテンダーズという宇野(薫)さんが中心となった寝技のみのイベントでタッグマッチで試合をさせて頂いたたり、タッグを組ませて頂いた事があった。
プロレスデビュー戦の時の記者会見でも言ったが、「ご縁があるな」と心の中で思わざるを得なかった。

そして ついに

鈴木さんとの試合の日を迎えるのだった。
このプロレスデビューで俺は新たな方々と出会うのだった。


続く