Jロックを辞める前に 須藤元気に言われた言葉。
彼は色々と噂を聞いていたらしくアドバイスしてくれた。
「俺達格闘家は神輿にのる立場だから。神輿を担いでくれる人や周りにいる人間がちゃんと応援してくれないと 試合でも勝てないし、それ以前の問題だよ。離れるか 付くか 中途半端は何も生まれないよ。」と。
正に彼の言うとおりで俺達ファイターは神輿を担いでもらう立場なのだ。いかに自分の見方を沢山つけるか、
いかに可愛がってもらうか、で 格闘家としての人生は左右される。
プライド時代は試合以外に悩みがありすぎて試合に集中できない事も多々あった。
元気意外にもよく言われたが そうなった人間は“飼い殺し”にされてしまう。
彼の言葉はあまりにも的を得ていた。だから離れる事にしたし、今から付こうと思っても色々な事がありすぎた。
だから俺は心機一転 新しい事務所で やり直そうとした。
話しは戻って 新しい事務所に入り その会長さんは石井館長と親交があるのがわかった。 だから俺もヒーローズにすぐ出れるんだと思ったしJロックの社長の好意を流してしまったのだ。 何より 前回出てきたその詐欺師の口車に既に乗せられてしまっていたのだ。
そして会社が形になってきてニコラスさん達とも練習を開始し始めた。
契約を交わす時、普通スポーツの世界では1年契約が普通なのだが 3年契約という話しになっていた。しかし色々周りに相談し1年にしてもらった。 会社には新しくマネージメント会社を任された母体の会社から来た新社長と詐欺師とニコラスさんのジムで空手を教えていた人間がマネージメントをやる事になった。内心 「こんなうさん臭い奴(詐欺師)と経験のない人間達で大丈夫なのか?」 と思ったがとにかく俺はヒーローズに出て試合をする事しか頭になかった。
しかし、アパートを個人に用意するとか 給料はこれくらい…とか 聞いていた話とは全くかけ離れていた。
嘘付きの岡山弁を操る男にまんまと騙されていたのがわかった。

けれども 寮みたいなアパート(1人用ではない)と 少ないけど毎月出る給料(ニコラスさんはかなりの額をもらっていた)を与えられるのがわかり、試合をすればファイトマネーも何割かは入るので十分やっていけると思っていた。

そして契約を交わし 初めに来た試合が オーストラリアで行われるという エクスプロージョンという大会だった。
日本人のプロモーターがやっている大会で向こうではそこそこ知名度がある大会だ。
俺はJロックを辞め 練習環境も変わり(総合の練習環境がなくなりニコラスさん達と打撃ばかりになった。)その詐欺師と元空手の指導者(以下元空手講師)達とも 「今回は強豪選手は避けよう」との事だった。 前回武士道で負けていたし、なくしていた自信を取り戻すにはなんとしても、どんな事をしても“勝利”が必要だったのだ。
そして俺とニコラスさんの参戦が決まった。

ニコラスさんの相手はまぁ俗にいう正に“金魚”って感じだったが 俺に来た相手の資料を見て 「ん?」と思った。
名前はヘクターロンバード。オリンピックで六位につけた過去のある俺より若い上昇中の選手で 「コイツは強いな」とすぐ理解できた。

強豪選手は避けよう と向こうのプロモーターにも言ってあると詐欺師と元空手講師に聞いていたのだが 完全に“名前はまだ売れてないだけの強豪選手”だと確信した俺は文句も言えず 試合に備える事にした。
この試合から 新しい会社の詐欺師と元空手講師の最狂コンビが 遂に正体を現し始めるのだ。


続く