カナダでの虐待と発達障害への対応(死刑制度3


 いよいよ最終回です。ここでは、被害者遺族の心を回復させるために必要なカウンセリングと無差別殺人を防ぐ方法を書いていきます。



●被害者遺族のカウンセリング

 前回のブログでは、被害者遺族の心の回復にはカウンセリングが必要だと書きました。加害者を殺しても、決して心の回復にはならないことも書きました。なぜなら、被害者遺族にとって本当に必要なことは、



・加害者を殺すことではなく殺された子供を取り戻すこと


 親子の愛情は、普通で考えるよりはるかに深いものです。



 ここでは最初に、虐待やニグレクトされた子供の心の回復から書いていきます。すでに書いたように、発達障害に限らず、多くの子供たちが虐待、ニグレクトされて、特に発達障害の子供たちが境界性人格障害になって犯罪を起こすことが多い。この理由は、「親からの愛の拒絶」です。



 神戸の少年A、佐世保の大久保小学校の小6の少女A、奈良県の高校1年生の少年Aは「親からの愛の拒絶」という点では同じです。これらの少年少女が入所した関東医療少年院では、これを回復させるために、



・疑似的な両親と一緒に住まわせて、「親からの愛の拒絶」から回復させるために、本当の親と同じような「愛情たっぷり」の環境において、しつけや教育を最初からやり直す


という方法をとります。そして、回復に成功しています。



 これと同じように、被害者遺族の心の回復も、「子供を取り返す」ことは不可能ですが、「子供への愛情の復活」は可能だと思います。その為に、上記のように疑似的な子供を設定して、何らかの生活をして、心の回復をするのです。


 このことは、たぶん未知の領域でしょう。けれども、加害者を殺して「さあ、これで一件落着」という姿勢ではなく、多くの人たちが取り組むべき方向ではないかと思います。つまり、本当に被害者遺族の心の回復を願うのなら、加害者を殺すことに専念するのではなく、どのようにカウンセリングしたらいいしかに専念したほうがいいと思います。



●カナダでの対応

 さて、ここでは無差別殺人を繰り返さないために、カナダでの対応を参考にしながら書いていきます。カナダでは、子供の人権を守るということ、そしてまた発達障害への虐待などが、境界性人格障害を生むことが多く、したがって殺人事件が多くなるとして、つぎのような対応をとっています。



・発達障害が4歳未満で発見されたら200万円の支給

 まず、子供が4歳以下で「発達障害」だと診断されたら、その家庭に年間約200万円が支給され、発達障害のケアの専門家を雇って、正常に育つように指導します。



・すべての学校で発達障害の教室設定

 カナダの学校では、特別なことがない限り、発達障害の児童がある人数存在する場合は、特別学級を設けて、そこで教育します。私の友人が、この学級の担任で「いつも動き回るし、いうことを聞かないので、とても疲れる」と話していました。



・教室で「いやなことがないか」を質問する

 カナダでは、定期的に学校の教室で、教師によって「家で何か嫌なことをされていないか」を質問をして、もしあれば、ただちに児童相談所に通報します。児童相談所では、ただちに家庭訪問をして、いやなことをやめさせ、もしやめなければ警察に通報して子供を児童相談所で保護するという対応をします。



・教室での一貫した姿勢

 そして、カナダでは、発達障害の子供が普通学級にすることもあるので、小学生から高校生に至るまで「いじめ」と絶対に許しません。この「いじめ」かどうかの境界は「プッシュ」です。つまり、相手を「押した時点」で、それをいじめと認定して校長が出てきて、両親と話し合います。



 カナダでは、以上の他にも多様な対策をして、子供を虐待、ニグレクト、そしていじめから守ります。その時の子供の人権を守るだけではなく、将来に境界性人格障害になる道を断つのです。


●真に凶悪犯罪をなくすには

 真に凶悪犯罪をなくすには、2つの方向から対応することが大事です。1つは、

 

・人の命はかけがえのないもの

・人の命は地球の重さよりも重い



というように、「人を殺すな」という意識を持つことです。死刑制度が憲法の「残虐な刑罰を禁ずる」に違反するからではなく、単純に「人を殺すな」ということ、この基本的人権を国民が持つことです。

 そして、2つ目は、虐待したりいじめを繰り返すようなテンションが高い社会を変えることです。この虐待、ニグレクト、そしていじめなどは、いつの世にも存在したわけではなく、社会が凋落し、格差が拡大して、人々から希望が失われ、そして絶望が拡大した社会に発生すると思います。したがって、私たちはこのような社会を変えることが必要ですが、仮に変えることが無理だとしても、



 ・普通の若者、発達障害などの社会的弱者の雇用を吸収し、おおらかな環境を準備し、そして生きがいのあるコミュニティ


 を構築することは可能だと思います。私が仲間と進めている「ワイナリー起業」や「果樹園起業」は、このような理念の下で進めています。