カナダでの虐待と発達障害への対応(参考文献2


 ここでも、虐待と発達障害の理解を深めるために参考文献や情報などを書いていきます。



●少年A 矯正2500日全記録 草薙 厚子

●「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記「少年A」の父母


 この2冊は、1997年神戸の須磨区で起きた中学生による少女と児童の殺傷事件を書いたものです。


この少年は、発達障害の中でもアスペルガー症候群を持っていて、何らかの強力なしつけや「ニグレクト」を受けていて人格障害を起こしたといわれます。この場合の人格障害は、親の虐待に対して、深層心理で復讐をしたくなるが、これができないので、自分よりも弱いものに仕返しをするという典型的な犯罪性人格障害(境界性人格障害)です。


 本人は、発達障害なので、いわゆる母親から見ると、「この子は他の子供よりも要領が悪く、だらしがないので厳しくしつけないといけない」と思い、他の子供よりも「普段の行動や学習に厳しいしつけ」を行ってきたといいます。


また、母親が思うように育てることができなくなったら、あまり関心を示さなくなり、いわゆるニグレクトになったと思われます。犯行当時、少年は神戸新聞に送った手紙には「厳しいスパルタ教育」とか「透明な存在」という表現が、それを物語っています。



そして、思春期になっても年相応の自由な行動を制限され、たぶん、自分から射精する欲動までも抑制されてきたと思います。したがって、「母親がいなければ、自由にできる」という深層心理が芽生え、母親の代わりに猫を殺した時点で射精したのです。


 2冊目の「「少年A」この子を生んで」を読むと、最初はこの母親は虐待まがいの行動をしなかったと書いていました。けれども、少年の証言がどんどん進んでいくうちに、少年の口から「厳しい母親で大変だった」というのを知って、はじめて自分は虐待まがいのことをしてきたと理解したようです。


だからこそ、両親で初めて少年に面談に行ったときに、少年から「帰れ、ブタ野郎」といわれたことが理解できたのです。この少年にとってみれば、「本当はこのような人格になりたくはなかった、母親の強度なしつけと教育の押し付けでこうなった」と思ったのかもしれません。



 実は、この本を読んで、私は三島由紀夫の「金閣寺」を思い出しました。母親から「将来は金閣寺のトップに立て」といわれ、教育され、そして金閣寺の雲水になったわけです。それから後も、母親が時々訪れては、昇進を迫ります。


そんななかであるときに、学校の同級生2人と2人の女性とハイキングに行ったときに、別々に行動し、自分たちもセックスをしようとした時点で、頭の中に「金閣寺」が現れて実現できなかった。そして、そんなことが何回も起きる生活が続いて、その「金閣寺」に火をつけたと思います。私には、自分の性欲動を抑える母親のかわりに金閣寺に火をつけたと思われてしょうがありません。



 さて、本題に戻ります。この神戸の少年Aは、関東医療少年院に入ってから、まともな母親と父親の下で生活することが治療の方法だとして、疑似的な精神科医の女性と男性を父親として、愛情たっぷりに育てられました。


 そして、この女性たちは、普通の生活を送っていくうちに「何を持って少年が回復したか」というと「自慰」ができたときとしたわけです。自分の部屋に監視カメラがあると、できないから、とりはずしてくれといって、取り外した。それから数日後に射精できたというのです。


 このことは、世の中の教育熱心な母親にぜひ知っておいてもらいたいことです。最近では、結婚しても性生活ができないエリート若者が多いといいますが、もしかしたら、強制的なしつけや学習が原因となり、さらに「自慰」や「性交渉が」が不潔なもの、いかがわしいものと押し付けられたのかもしれません。



●東電OL殺人事件 佐野真一

●グロテスク 桐野 夏生


この「東電OL殺人事件」は、同じ1997年に渋谷区円山町で、女性が何者かによって絞殺された事件で、昼間は東電のエリートOL、夜は娼婦という2つの顔を持っていたことで話題になった事件です。そして、「グロテスク」は東電OLをモデルにした小説です。


 さて、「東電OL殺人事件」です。発達障害には男性が多く、女性は少ないといわれていますが、この本で載っている人は女性です。有名私立大学を卒業後、東京電力にエリート社員としてつとめ、夜は売春をして過ごし、過食と虚飾を繰り返し、そして、39歳の時に、渋谷の安アパートで絞殺されたというものです。


 実は、この事件には伏線があり、逮捕されたゴビンダという人は、今でも無罪を訴えており、ここ10日間くらい前に、新しい証拠が出たということで再審になる可能性を占めています。


 さて、この女性、著者の佐野氏によると、神戸の少年Aとおなじような生活を強制され、エリートにならなければその存在を認めてもらえないという生活を送ったとされています。


 そして、そのような母親を否定して仕返しをする為に、母親が最もいやがる売春に走ったというのです。