カナダでの虐待と発達障害への対応(参考文献1


 これまでにカナダでの虐待や発達障害の対応を書いてきました。

 ここでは、そのような内容を理解するための参考文献や情報などを載せておきます。なお、ここでは単に参考文献の内容のまとめだけではなく、それを読んだ私の意見も載せておきます。

●発達障害に気づかない大人たち 星野仁彦


 発達障害の本にはたくさんありますが、どれもだいたい同じです。その基本的な特色を理解するには、この本がいいでしょう。なお、この本では、「大人」と書いてありますが、基本的に子供に見られる障害、つまり一次障害を書いてあります。


この一次障害のあとで、適応とか二次障害というものがあります。この本では、この適応や二次障害はあまり書いていません。基本的な発達障害の特色を知るには、この本を読んでください。また、本ブログの「その3」には、簡単な発達障害の特色を書いていますから、参考にしてください。


さて、ここでは、発達障害の一次障害から二次障害いたるケースから書いていきます。この人たちは、子供の時には、本人の特性で、周りの人たちがイライラしたり、悩んだりして、強力なしつけ、中には虐待が継続的に行われた結果、二次障害が起きる場合があります。ただし、絶対多数の発達障害の人たちは二次障害を起こしていませんし、一般社会で活躍しています。



 さて、発達障害の人たちの多くは、二次障害にならなくて、年齢を重ねるごとに「適応」という人格が形成されることがあります。たとえば、子供の頃に「あっち、こっちと動き回るという行動の多動性」がありますが、大人になって、これが抑制されて、「びんぼうゆすり」と変わる場合です。


ただし、むしろ建設的な適応もあります。たとえば、発達障害の人の中には


・人の一方的な話を聞くのが苦手だが、読書は得意である

・逆に、読書は苦手だが、人の話を理解して頭に入れるのが得意

 という人がいます。


たとえば、このうちの前者の特色を持っている人は、学校の授業が頭に入らなかったり、周りの生徒のちょっとした雑音で気が散るという生徒がいます。このような生徒は、授業の前に、参考書などで予習しておくという適応があります。こうすれば、授業中の先生の説明が付加的に理解できるようになります。


まず、前者の典型例はアインシュタインでしょう。高校で一方的に数学の授業を受けている間はまったく理解できなかったから大学受験には落ちたけれども、浪人生活で自分でテキストで勉強したら急速に理解が深まり、リーマン幾何学でさえも研究できたということがあります。


また、後者の典型例はトムクルーズでしょう。映画などの台本に書いてあるセリフを読んでも理解できないので、誰かに読んでもらって理解して覚えたということです。

以上を読んでわかるように、発達障害と診断されてもうまく適応すればいいので、その才能をいかんなく発揮できることが多いのです。


このように、きちんと適応をするには、精神科医のなかでも発達障害の専門医のカウンセリングを受ければいいと思います。ちまたでは、このカウンセリングは気休めで、あまりいい効果はないという人がいますが、そのような人は、専門医でない精神科医に治療を受けたか、途中で放棄した人です。「専門医のカウンセリングは治療である」ということを銘記すべきでしょう。


 ところで、以上のような正しく適応になるためには一定の条件が必要です。それは「愛のムチ」という名前の体罰や精神的な苦痛、また「虐待、ニグレクト、いじめ」がないという条件です。専門のカウンセラーの指導の下で「子供のころから真綿にくるんだように優しく育てる」ことが重要です。

ADD/ADHDという才能 トム ハートマン

 この本は、発達障害を発生学的に研究した本です。

 人類の歴史は、「狩猟採集時代」→「農耕時代」に進化しました。このうち、狩猟の時代で、「狩猟で画期的な能力を発揮した脳」が今でも残っている人が一定数存在しており、この人たちが少数派(発達障害)として今でも存在しているというのです。


 たとえば、一人でジャングルの中を何日も歩いて獲物を狙って旅をするとします(過集中)。そして、獲物を獲得したら、ほっとして、油断すると周りから野獣に襲われる可能性があるから、常にきょろきょろしたり、雑音に気を付ける(注意欠陥)。


 この発達障害の過集中と注意欠陥は一見矛盾するようですが、時と場合で使い分けられます。一般の人たちに「どうも過集中がわからない」と質問された時は、私は「三日三晩本を読み続ける行為」のようなものということにしています。これ以外にも、


・一定の研究を何年間も続ける

・スポーツの同じ練習を何年間も続ける

タイガー・ウッズが毎日、最低で3時間、長くて6時間もパターの練習をするというのが有名です。しかも、最後に2メートル距離を100回連続的に入らないと最初から繰り返す。つまり、普通の練習ではないということです。



 つぎに、農耕時代になると狩猟時代にあまり優秀でなかった人たちの脳は農耕用に適応します。つまり、

1人ではなく、複数でチームを組んで農作業をする

・その際の仲間同士の約束事は守る

・あっちこっちから声をかけられたら、いちいち返事をして要望を実現する


などです。このような人たちが、現在では多数派を形成します。


 実を言えば、発達障害の人たちは、このようなチームプレイはもっとも不得意とします。

 

さて、このように、狩猟採集民族の脳を持ち続けた人たちが、発達障害であるとしたら、いまでも、この子孫が存在します。それが海の狩猟採集民族である漁師であったり、北米ではインディアンという人々です。


実際に、発達障害のカウンセリングに来る人の中では漁師の子供がとても多いといわれます。たとえば、海をもぐって魚介類を撮る海女の人たちは、いったん潜水に入ると、わき目を振らずに、ひたすら獲物に向かってまっしぐらに狙って3分とか5分ももぐり続けて漁を続けます。


また、アメリカンインディアン。発達障害の人の中には「高いところが好きで、支えのない場所が好き」という人たちがいます。かつて、アメリカの摩天楼を建設したときに、どのような命綱もつけずに、てっぺんで好んで作業をしたのがインディアンだといわれます。

 最後になりますが、このように狩猟採集民族の脳が今でも残っているということで、発達障害の人には男性が圧倒的に多いといわれます。なぜなら、原始時代では狩猟は男性が担っていたからです。