カナダでの虐待と発達障害への対応(その1)
子どもの人権を守る国家としてカナダが注目されています。ここでは、カナダでの子どもの虐待と発達障害への対応を簡単に書いておきます。日本との違いをかみしめてください。
■カナダでの虐待問題の実際
最初は、私がカナダのバンクーバーで実際に聞いたエピソーから紹介しましょう。
●エピソードから
あるときに、私が友人の自宅に伺った時におどろくような話を聞いたことからです。その友人宅では、子供が4人おり、上2人は女の子で、下2人は男の子でそれぞれが小学生です。ある日、彼らが学校に行ったときに、下の男の子の先生が
「家でイヤなことをされている人はいますか」
と聞いたところ、その下の男の子が手を挙げて「あります」と答えました。そして
「毎晩のようにお兄ちゃんに僕のオチンチンを触られて嫌だ」
といったわけです。
それで、先生からその話を聞いたソーシャルワーカー(日本では児童相談所の担当官)がその晩に友人の自宅に来て「兄と弟の部屋を分けるように」と伝えて帰りました。
友人は、日本からカナダに移住してわずか8-9年しか過ぎていなかったので、それは自分たちの個人的な問題で、ソーシャルワーカーが介入することではないと無視していたのです。
ところが、翌日になって、弟が学校に行くと先生から部屋をわけてもらえたのかを聞かれて「分けていません」と答えました。
早速、その日のうちに自宅に電話が来て、両親がソーシャルワーカー事務所に呼び出されて
「昨日、私たちがあなた方に子供の部屋を分けるようにいいましたね。でも、分けていない。どうしてですか」
と聞いたところ、友人が
「そのようなことは個人の家庭の問題であって、あなた方にとやかく言われる筋合いはない」
と答えたところ、その担当官は
「あなたはここをどこだと思っている。日本ではなくカナダです。もし、私がここで警察を呼んで、あなたの子供を隔離したら二度とあえなくなりますよ」
と強く警告されたそうです。この結果、いうまでもなく、その友人は部屋を分けて兄と弟を入れたそうです。
つまり、日本では笑いごととしてすますことでも、カナダではゆるさないということです。プライバシーを触るだけではなくカナダでは
・12歳以下の児童は家に一人に放置したり
・スーパーの駐車場などで一人で放置したり
・あるいは、叩いたりすると
虐待に相当して、逮捕されることもあるといいます。
●虐待やいじめの臨界点
カナダでの、この虐待やいじめやニグレクトの臨界点の1つの目印は、プッシュするかどうかにあります。たとえば、学校で、ある生徒が別の生徒の背中をプッシュした時点で、それはイジメと認定されて校長の出番となります。いうまでもなく、中学生以上は退学になることがあります。
このように、子供の虐待、いじめ、ニグレクトに対する対応は、国によって全然異なり、日本が標準だとは思ってはいけないんです。
日本では、最近になって、ある家で虐待が発生していると、近所の人が児童相談所に通報した場合には、児童相談所の相談員が、その家に強制的に入ることができるようになりました。しかし、それから以降、「隔離」するまでの手続きが複雑で、その結果として、手遅れとなって死亡する事件が後を絶ちません。
●どのような人が虐待やいじめをして、どのような子供が虐待されるか
それでは、実際のところ、このような虐待、いじめ、そしてニグレクトをする親と子供はどうなんでしょうか。つまり、どのような親が虐待したり、どのような子供がいじめを継続して、どのような子供が虐待されることが多いんでしょうか。つぎに「発達障害」について書きます。カナダとの比較でお読みください。