日本の里親委託率は近年向上しているが、豪州や米国などと比べるとはるかに低い。「日本では里親委託は実親の同意を原則としているが、同意しないケースが多い。一方で、他人の子を育てることに抵抗感がある人もいる」。大阪府立大の伊藤嘉余子准教授(38)は、制度が定着しない理由をこう分析する。
「里親の愛情を受けられた自分たちは恵まれている」。里親に育てられた子供(里子)たちは口をそろえる。
周囲には、望んでも大学に行けない里子や児童養護施設の出身者もたくさんいる。奨学金制度を知らずにあきらめる人も多い。
「里子や施設の子は、自立を求められる高校卒業を迎えるのがとても不安。けれど、そのことはあまり知られていない」。
「少しでも多くの子が『当たり前の生活』を送ることができるようになってほしい」と切実に願っている。
【用語解説】里親制度