藤本ひとみさんの原作を、植田景子さんの脚色と演出で、柚希礼音・夢咲ねねのトップスターコンビ時代の、14年も前の星組公演でした。

公演された当時は、それは賛否両論のクッキリと別れる、異色な名作でした。因みに、私は賛辞を送った一人でした。久しぶりに、Blu-ray映像で観ましたが、数ある柚希さんの、主演作品の中でも、「眠らない男ナポレオン」と並び称される良い作品です。クリエイター植田景子と、揶揄されがちな植田景子さんですが、花組公演「愛と魂の歌アンドレア・シェニエ」と並ぶ、植田景子さんオリジナルジャンルへ分類される、作品だと思います。ユダヤの立法を、ドイツ語へ訳した事によって、世間からはおろか、ユダヤ人の同胞からも迫害を受ける主人公の物語なので、賛否両論の否定的な意見の方は、ストーリーの解り辛いからなのでした。確かに、ストーリーの解り辛いのは、私も否定はしませんが、この作品の様式美の素晴らしいさや、植田景子さんの丁寧に書かれた脚本と演出を観れば、必ずこの作品の良さは、解って貰えると思います。美弥るりかや凰稀かなめの、星組時代の演技や、夢咲ねねの丁寧な演技、そして京三沙さんと一樹千尋さんの、専科生らしい重厚なお芝居も、ウッカリすると、帝劇ミュージカルと勘違いする位に楽しめた、星組公演「ハプスブルクの宝剣」でした。

今では、殆ど観られる事の無くなった、"これぞタカラヅカ!"と、呼べる名作だと、私は思います。