連日、外国人観光客がローソン越しの富士山を撮影するために迷惑や危険な行為をしていると報道されている。

 ただ、日本政府は「観光立国」を掲げて観光庁を作った位だから、この程度のことは霞ヶ関なら「想定内」の筈だ。「経済効果」があるのだから、「オーバーツーリズムくらいは各々の現場で対処してね」ということなのだろうか。

 「観光地」に大勢外国人観光客が訪れるのは仕方ない。小さな自治体でさえ「是非来てください」とアピール合戦で、地方の町村は一所懸命だ。問題は、「観光地」でもなんでもない、生活圏や農耕地や山林等に無闇に入って荒らされるのが困るのだ。

 数年前にも似たようなことがあった。場所は福岡市から離れた郊外。トラックやトレーラーが多く行き交う県道から脇に折れて、物流倉庫群を抜けて、数社ほど集まる工場団地と閑静な住宅地のある区域。地区の納骨堂があるような所だから、町の中でも本当に静かな場所だ。普段は生活道路や抜け道につかわれている、さほど広くない道のそばに、アニメのワンシーンをおもわせるような森があった。それがSNSでバズって、写真をあげたいが為に大勢つめかけて、今回と似たような騒ぎになった。外国人観光客までもが大型バスでやってきて違法駐車し、危険な状況がしばらく続き、全国ニュースにもなった。その後、自治体か個人かわからないが、駐車場が作られたものの、数年たった今はもう誰も来てない。

 観光地がオーバーツーリズムになるのは致し方ないが(ネットでも呼びかけてるわけだし)、今回のローソンや上記の例のような“非観光地”に観光客が大勢押し寄せるのは、本当に迷惑でしかない。  

 ところが、岸田総理はそんなことはつゆ知らず、「観光立国」を更に推し進め、もっと外国人を呼ぶようなことを言っていたから、今回のような問題はこれから更に日本中で頻発する事が予想される。普段の生活に支障を来す「観光立国」とは、いったい誰のための「観光立国」なのだろう?仮に、観光地と関連産業が儲かったとしても、それが周辺に波及するまでにタイムラグがあるか、または波及しないかもしれない。“非観光地”はコストとリスクだけ負担させられる。「オーバーツーリズム」は観光地だけにとどめて欲しい。