現在最高裁に係留している私の刑事裁判ですが、無罪を争い上告趣意書を提出後、現在進行形でいくつかの意見書を提出しています。その一つの元となったのが、

経理情報No.1192(2008.9.10)に掲載されていた、筑波大学ビジネス科学研究科教授の弥永真生氏による、長銀事件無罪判決の分析記事です。

ライブドア事件刑事裁判の第1審では、検察の突然の強制捜査によるメディアの洪水のような異常報道により極悪人にされてしまい、そういった世論の雰囲気を察してほとんどの人がライブドア擁護や私の擁護に繋がる発言を出来ないような雰囲気が醸成されていました。
あるいは、擁護する発言をした人もその部分をカットされて報道されていたりしたようです。今でもその種の発言を良く聞きます。

そんなこんなで、一審でも特にファンドの会計処理について弁護側・検察側の解釈が分かれていて普通は両者が会計に通じた人の鑑定証人をそれぞれ立てるのですが、小坂敏幸裁判長の割と強引な訴訟指揮で裁判長が指定する鑑定証人に一本化されてしまいました。彼は100%その会計処理が間違っていたとは言えないが、そういう会計処理を肯定する会計士はいないのではないかと、結構グレーな証言をしたことを思い出します。

結局判決は、ファンドの会計処理以前にファンドに実体がなくダミーだから自社株取引に該当し、連結決算では損益計算書に利益を計上すべきではなく、結果として有価証券報告書の虚偽記載で有罪ということになったんだけど、それは裏を返せばダミー論を使わないと有罪に出来ないからダミー論を使ったという事にもなるのかもしれないと思ったものである。

しかもそのダミー論は、違法行為をしようとしてダミーファンドを立ち上げたのだから、ダミーであるという循環論法に等しいものである。実体は裁判でも明らかにされているが、HS証券の子会社であるHSインベストメントがGPであり、さらにその先にVLMAファンドを立ち上げ元ライブドア社員だった野口氏がインサイダー取引をしないように別会社の信託のような形で売買を行うために立ち上げたものであり、ファンドの利益を連結利益計上するために仕組んだわけでなく、実体はインサイダー回避が目的だったわけだ。つまり法令順守の為にファンドを作ったので、別に脱法をしようとしたわけではないのである。この辺が一審について非常に私が納得行っていない部分である。

当時のファンド(民法組合、投資事業組合)の連結・非連結の基準は曖昧であったことは事実である。つまり連結しないという判断をしているケースも少なくはなく、つまり明確に決まっていない場合は両者の解釈が可能であるという判断をしたのが、長銀事件の無罪判決である(長銀事件は不良債権の引き当て基準での争いであるが)。是非この雑誌のバックナンバーが取り寄せられれば読んでみてほしい。

このような意見が普通に雑誌などに掲載されるようになったことが大きな変化である。これまではライブドア事件でライブドア側旧経営者側に有利になるような発言そのものが忌避されていたのだから。
他にも法律関係の専門雑誌で同様の解釈をしている先生の記事があるので、それはまた追って紹介しようと思う。

これだけでも、ライブドア事件というのは検察によりかなり「作られた」部分が多い、あるいはメディアが本質的な部分をあまり報道していないという事が分かるだろう。。。

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そういえば、週刊ダイヤモンドのtwitter特集に私と@tsudaさんの対談が掲載されているようです。



この表紙すごいな。。。