[裁判員裁判]強盗強姦罪で求刑通り懲役15年 青森地裁

裁判員裁判が導入され、予期されていた事態が現実のものとなりつつある。
加害者が犯罪事実を認めている事件で求刑通りの刑が言い渡されることは稀である。もちろん例外のケースもあるが、犯罪事実を認めている場合刑の軽減を求めて色々な謝罪やら贖罪寄付やらありとあらゆる手段をつかって反省をアピールするのが当然の弁護手法であり、裁判官もそれを勘案して否認事件とは違い、求刑の7掛けや8掛けの判決を下すのが「相場」であると思う。

しかし、求刑通りというのは異例である。しかも性犯罪事件で女性裁判員が一名だけという状況でこうなっているわけだから、これが男女同数あるいは女性のほうが多かったりした場合求刑を上回る量刑判断も十分在りうるといわざるを得ない。

そうすると、どうなるか?

日本の刑罰は同種犯罪は併合罪といって法定刑の上限の1.5倍までしか課されない。もちろん死刑がある場合は上限は死刑になるわけだが、たとえば懲役10年が上限の犯罪を何度繰り返して起訴されても懲役15年までしか課されない。法定刑の上限とはこれ以上酷い状況はないというくらい非道の限りを尽くしているようなケースでしか求刑されない。そうしないとバランスが取れないからだ。通常は上限の半分とか7掛けとかそういう求刑になる場合が多い。

例えば私が起訴された証券取引法違反の法定刑の上限は懲役5年。あのライブドア事件のマスコミ大騒ぎの最中、与党はマスコミ世論に引きずられ証券取引法違反は金融商品取引法と名を変えて懲役刑の上限は10年に上がった。「倍」だよ「倍」。これは凄いことだよ。「お前、そりゃインサイダー取引だろ」って思われることを平気で口にしている人が存在する。もちろん知らない人だけど(知っている人には注意する)。そんな無知なにわかトレーダーになって捕まってしまう人が結構でてくるんじゃないか?悪いことしたら罰せられるのは当然のことだが、法定刑をいきなり倍に引き上げるってのは、荒業だし、それに異議を唱えるものがいなかったことにも驚きだ。

で、私は証券取引法違反で二回起訴され理論上の法定刑の上限は7.5年。しかし検察の求刑は4年。あれだけ私が罵倒し倒した検察にも良識はある。宮内さんなどを最大限活用して世紀の大悪党に仕立て上げようが、法定刑の上限の半分ちょっとだ。判決は2.5年。求刑の大体7掛けくらいだ。もちろん私は無罪を争っているし、その判決は不当だとは思うが、否認事件で徹底的に争っていたのにも関わらず裁判所は全面的に検察の言い分を認めての判決でこれだ。これが量刑の相場ってもんだ。たぶん裁判官は最大級の罰を私に与えようとおもってこれだ。

私は、今回の性犯罪の裁判の詳細を知らない。知ろうと思っても情報が限られていて入手できていない。断片的に伝わる裁判の状況からみて、これは量刑相場を一変させる大事件に思える。以前もここで話題にした危険運転致死傷罪など、とにかく被害者がいる犯罪では裁判員は厳罰化方向に振れやすそうだ。

その結果はどうなるか。判決は法定刑の上限で張り付き、結局立法府で法律を改正し法定刑の上限が上がってくるのではないか?併合罪で1.5倍までというこれまでのルールももしかしたらアメリカのようにいくらでも積みあがっていく方式に変えろという世論が出てくるのではないか?

行き着く先は厳罰化・厳罰化である。

厳罰化の推進派は「それが当然である」というだろう。「悪いことをしなきゃいいんだから」
正論である。

しかし、世の中は犯罪に満ち溢れている。普段からよく車の運転をしていて、世の中に交通違反をしたことの無いドライバーがどれほど少ないか?数年前まで飲酒運転をしていたドライバーがどれだけ多かったか?
ゴルフでニギリをしていないゴルファーがどれだけ少ないか?
会社の経費(交通費)を誤魔化していないサラリーマンがどれだけ少ないか?
酔っ払って居酒屋で裸になる友達はひとりくらいいるだろう?
未成年のときに酒やタバコをしたことはないか?パチンコに行ったことは?

厳罰化の流れというのは、こういう些細な犯罪にも影響してくる。
私はあんまり息苦しい世の中にして欲しくない。

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