『ブラックジャックに…』著者「雑誌連載は最後かも」

まさに、「ブラックジャックによろしく」の主人公よろしく「青臭い」とも思えるくらいの挑戦を続けている佐藤秀峰氏ですが、雑誌連載をしつつ、ネットで漫画を公開するという挑戦をするようです。

で、彼のホームページをみてきましたよ→佐藤秀峰 on Web

まあ、サイト自体は滅茶苦茶重くて見るのに時間がかかるんだけども、しっかり造りこんであって作者の思いを感じるんですが、もっとこう、ナビゲーションはシンプルなほうがいいのかなーとか、日記とか毎日見たいんだけど、RSS配信とかしないのかなーとか、思ったりもするんですが、「プロフィール」のしっかり造りこまれた漫画には思わず、惹きこまれてしまいました。

「プロフィール」にも書かれていた、初めての雑誌掲載作品は当時私もリアルタイムで読んでいて、「荒削りだけど、アツいやっちゃなー」的感想を持ったのですが、その後あれよあれよという間に人気漫画家になっていましたね。「ブラックジャックによろしく」もタイトル含め最初っから読ませていただいています。

で、本題なのですが、ネットと漫画のあり方については、私は別に漫画家でもないのですけど色々思うところがありまして。たしかに漫画雑誌は少年ジャンプが数百万部売れていた頃と違い、どんどん読まれなくなっています。昔は少年ジャンプの発売日は電車の中で数人が読んでいたものですが、今はみんなケータイとかDSとかいじってます。時間つぶしの手段としてケータイとかに負けてるわけです。

だから、漫画雑誌は衰退していく方向なのは間違いないでしょう。私も今はイブニングぐくらいしか買っていません。コンビニに寄る用事がなければ、買わないときもあります。すでに雑誌連載には意味がなくなっているとも言えるでしょう。佐藤氏が指摘するとおり、ほとんどの漫画家は原稿料では食っていけず、単行本の売上に依存しているのが現状です。

ライブドアの時は、その構造に注目してネットで無料で漫画を配信し、まとめたものを単行本で出すというビジネスモデルを考えていました。新人作家や、新作漫画は無料で多くの読者に触れてもらわないと、いきなりネット課金というのは難しいと考えたからです。まずは四コマ漫画で、と考えました(今も続いているようですし、単行本も出たようです)。

でも4コマはともかく、新作漫画をネットで金はらってわざわざ見るかといえば、佐藤氏のような人気作家は別として平均的な漫画家でファンがそんなについていない人は難しいのかな、とも思います。人気作家でも一つの連載作品だけだと、雑誌に比べてオトク感が低いので思ったよりも収益が得られない可能性が高いでしょう。いや、無料ですら時間を消費するという意味ではケータイなどに負けているかもしれません。

配布手段の問題はあったにせよ、無料のコミック雑誌が数誌創刊され、全部消えていきました。連載で幾つもの漫画を読むという形態が消費者に受け入れられずもっと面白いものに流れていっているのでしょう。連載漫画という形態に慣れている我々の世代以上は忙しくてそれどころではないし、もっと下の世代はその形態すら知らないということです。

先日も紹介しましたが、漫画を全巻まとめ買いできるサイトが人気のようです。我々の世代以上がメインターゲットなのではないかと思われます。資金的にも多少の余裕があるような人たち。でもまとめて全部読みたいという時間短縮ニーズもそこにはあるのです。





AmazonのKindleという電子ブックリーダーがアメリカでは流行りつつあるようです。単行本もKindleユーザにとってみれば、コレクターズアイテム化しているのです。クリックして購入はするのですが、その時点でKindleでダウンロード購読できるようになります。届いた時点ではすでに読み終わっていたりするわけです。もしかしたら、漫画の単行本もそれに近い状況になるのかもしれません。

モバイルで「千里の道も」というゴルフ漫画にはまったときは、海外にいるにもかかわらずダウンロードがとめられず、数万円の余計な出費をしたこともあるくらい、好きな漫画はモバイルでもかまわない(まあ、紙の本のほうが数倍読みやすいのは事実ですが)、Kindleや、百歩ゆずってiPhoneAppでもいいのかもしれません。とはいえ、また当分は紙の単行本も売れ続けると思いますから、ハイブリッドでやるのが理想でしょう。

問題は、最初の発表の場です。私は別に連載という形にこだわる必要はないのかな、と思います。実際のところ、文字だけの作家は週刊誌やブログの連載を本にする場合もありますが、それは原稿を小出しに書いていけるから負担が少ないとか、その辺の理由が(少なくとも私は)大きいです。書き下ろしの本は、それまで全くどこにも内容を発表せずに勝負するわけです。だから、ウェブでの発表はチョイ見せで、単行本の最初の最初の章だけを見せておき、後は本を買ってね、でも十分やっていけるような気がします(人気作家は)。

新人に関しては、やはり無料である程度は公表していく必要があるでしょう。もし、漫画製作を組織的にやっていて弟子たちがデビューする予定であれば、それを人気作家の漫画と一緒に配信するという形態も考えられるでしょう。結局音楽と同じで、好きな作家の弟子の漫画とか、そういうつながりで漫画を購入するケースが多いのです。

などということをつらつらと考えてみました。
佐藤氏の新しい挑戦に、私は一ファンとして期待しています(日記はRSS配信してほしいし、サイトはもっと軽くシンプルにしてほしいですが)。

あ、あと新作漫画のお知らせメールサービスが便利な、mangaman.tvもよろしくです。





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あと、TBSラジオ「週刊デジタリアン」(4/18 深夜24:30~)ですが、

週アスblogでも、おまけ対談が聞けるようになるみたいです。あと、4/21に本誌(週刊アスキー)でも掲載されます。