課長島耕作は、今や持株会社である初芝五洋ホールディングスの社長になってしまったのだが(単行本もすでに出ている)、この漫画結構好きだ。

といっても、おそらくここに書かれている企業像と私が考えている企業像はちょっとかけ離れたものもあるのであるが、お話としてはかなり面白い。ので、実は何度も読み返したりしている。島耕作が体験してきたことを私も(ちょっと駆け足気味ではあるが)、後追いで、あるいは島耕作が後追いで体験してきているのだ。

だから、読み返してみると面白いんです。

私の島耕作初体験は、大学に入学したときに、それまで読んでいなかった雑誌モーニングを見せてもらったことにはじまる。単行本一巻に出てくる島耕作はなんと34歳(!)。私より1歳年下である。それで課長昇進が同期よりも早いというのが今見ると驚きである。彼が課長昇進の内示を受けて「公私ともども大過なく過ごさねば・・・」といっているところが面白い。

だって、私がこれから課長やるようなもんだよ!想像つかん・・・。でも、この年からあれだけのパワフルなエピソードをやってのけるのもすごいな、って感じもするし。

ニューヨークへの単身赴任や、妻との離婚、社内抗争で地方に飛ばされたり。海外でのエピソードはカジノのルーレットのチップの張り方など参考にしたこともあり。離婚経験も共通するし。地方に飛ばされたときは、京都のお茶屋遊びが登場するのだが、自分が体験するなど当時は思いもよらなかったが、今読み返すときちんと取材されてるんだな、なんて思ってしまう。島耕作と懇ろになるお茶屋バーの女将さんみたいな人もいるいる~ってなる。

彼は部長職時代にもう一度飛ばされるんだけど、そのときの音楽業界の話とか、ワイン業界の話も、その世界を知ってみるとなるほど~と思うことしきりだ。

ただひとつ、ありえねーとおもうのは、暴力団関係のネタ。20年前くらいの総会屋とかと癒着していたころの企業ならいざしらず、今時そんなのあるのかな~?と思うことが多い。まあ、これはいわゆる脚色の範疇なのだろうけど。

M&Aに関しては、海外事業の買収に関しては積極的に書かれているものの、日本企業同士の特に敵対的買収については辛辣だ。とくに部長時代に中沢社長の命で行われた初芝による初芝OBの会社の買収防衛戦なんかは、どこぞのブログでも批評されていたけど、明らかに行きすぎだ。中沢社長の背任といってもいいくらい。しかも、結局初芝の金で防衛戦をやったものだから、あの会社は初芝の連結子会社になったはず。それでいいのか?

なんか、会社は誰のものだとか、そういう不毛な議論が一時期なされてたけど、結構みんな長くその場にいると、愛着を持ってしまうんだろな、という感じがする。そういう感情は理解はできるけど、私はそういう感傷に浸りつつもやっぱり新しいものを求めてしまう性格なのだな、と今改めて思った。

島耕作を読み返すと、彼のしてきた体験の中で、怖い人に会ったとかそういう類のもの以外結構同じような体験を(早送りで)私もしてきたと思うのだけど、あの物語の中に私のような、作者の描く企業像とちょっと違う人間が出てくるとどうなるかってちょっと思ってて、興味があったのだけど、作者としてはそういうの、あんまり興味なかったのかな?ちょっと残念。