物語を読む『大造じいさんとガン』⑦ 2024,7,4ブログ

  『知り知り知り隊スーパーⅤ-1』№173(2004,3,10)号より

《はじめに》 授業の進め方について思うこと

 『知り知り知り隊スーパーⅤ-Ⅰ』の子どもたちと学習した『大造じいさんとガン』の授業記録は、今回でおしまいです。ぼくは学級通信の記録を読み直して、授業に対する新しい発見もありました。子どもたちの鋭さと同時に、自身の授業に対するいたらなさなどについて、少し思うことがありました。その一端は、全7回の授業記録紹介の《はじめに》に書きました。

 7回目の記録を読んで、内容とは別に感じたことは、授業へのすべての子どもたちの参加がなされていたかどうかについて、もう少し工夫ができなかったかなということです。

 このことに関して2つのことを考えました

 第1は、子どもたちは発言していなくても毎回この授業にその子なりの姿勢で参加しているということ。通信には授業の感想ではなく当日の読み取りノートから特徴的な言葉を選んでクラスのみんなに紹介していますが、この子たちは手を挙げて話さなくても仲間の発言をしっかりと聴き取り心を動かしています。それは、授業記録を読むとわかります。子どもたちの集中した発言や討論がつくる、ある種の“濃密な時空”が教室に生まれていることが分かるからです。

 第2は、グループ討論を入れることの可否についてです。学び合う授業において、全員が主体的に学ぶための一つの方法として、授業の途中でグループ討論(話し合い、班会議…等)や数人での自由な語り合い(2人とか4・5人とかで)を入れたらよいのではないかという指摘です。ぼくは、このことを否定するわけではありませんが、クラスみんなで学び合う授業がつくりだす“濃密な時空”が壊れない限り取り入れても良いかなと思います。小さなつぶやきしか言えなかった子がグループの中でなら発言できることは重要です。そこで“ハッとするような意見”が出されるかもしれません。3分、5分の話し合いをいれることによって、クラスみんなを巻き込んだ豊かな学びが生まれる可能性があります。

 但し、グループ討論に入る前に、集中した学びが成立し、そこに討論や対話が生まれている場合、グループ討論でそのことをどう考えるか話しやすい側面があると同時に、一旦つくり出した学級全体の学びの持つ“濃密な時空”が、“ゆるみ”とか“集中の途切れ”―時には“脱線”などが生じる場合があります。

 これは、授業における“集中と弛緩”の“波”と考えればよいと思いますが、45分間、学級の雰囲気を崩さずこの波を保つのはなかなか大変かなと思います。学習内容に関する明かな問題や課題解決のためにグループ討論などを入れる学習はかなり重要だと思いますが、国語の物語文などに於いては、どちらかと言えばグループ討論を入れるときに“波”の崩れが起きやすい場合が多いのではと思います。勿論、ぼくが今回進めてきたような授業において、集中しない児童や考えていない児童がいるのではないかという指摘もなされるかと思います。さらに、グループ討論を入れた豊かで質の高い国語の授業を創り出している方もいらっしゃるかと思います。そうした実践も機会があったら聴いてみたいなと思っています。(2024,7,4記)

 

大造じいさんは、残雪の姿に心を打たれる

【授業場面】

 大造じいさんのおとり(囮)のガンをハヤブサから守る残雪は、ハヤブサとともに地上に落下してたたかう。大造じいさんが近づくと、胸の辺りを紅に染めて残雪はぐったりしている。しかし、大造じいさんを見て、残る力をふりしぼって長い首を持ち上げる…。

 

聡志 …胸のあたりをくれないにそめて…。実際は傷を受けて血を流しているのだろうと思うけど、残雪には血は似合わない。そういう言葉にはあわないから“くれない”って言ったんじゃないか。

友樹 …血が出ているんだけど、残雪は頭領だから“血”はダサい。もっとかっこいい言葉で読者に伝えようとしている。

真子 …強い残雪もハヤブサにやられて傷ついた。でも誇りがある。その誇りのように“くれない”という言葉がある。

貴大 …第二の恐ろしい敵がきても、首を持ち上げて大造じいさんを正面からにらんでいる。残雪は、とっても根性がある。他のガンにはとても真似できないことだ。

良  …他のガンにはできないというところ、貴大君と同じ考え。最後がきても逃げ出さず、相手に対して“いかく”しようとしている。

聡志 …ここで、第二の恐ろしい敵と書いてあるが、第二というのは恐ろしさの順番なんかじゃないと思う。

T  …ハヤブサだけでなく、さらに恐ろしい敵ということね。

一浩 …ぼくは、ここの『ぐったりしていました』で思った。あのハヤブサと互角に戦ったからだ。

奏子 …『大造じいさんを正面からにらみつけました』と書いてあるところで、私の予想ですが、じいさんの顔を残雪は見ているというより、「撃つなら撃て!」「殺せ!」―何かそんなふうに死と向き合ってるように思う。

蒼空 …奏子さんの考えにすごく似ている。正面からにらみつける残雪のこと―。何でかというと、残雪は撃たれることはわかっているのだ。いくどもいくどもねらわれていたから! “死”と向き合っている。

博之 …残雪は前の場面では、いかくして、そこには仲間だけでなく自分も助かるというか、そういう気持ちもあったように思うけど、“生きたい!”と言うより、もう体力の限界にきている。心の中は「殺すなら殺せ!」って、そんなふうに思ってるんだと思う。

真子 …残雪は、撃たれることはもうわかってる。その残雪を見て、大造じいさんはちょっと尊敬しているようだ。

良  …奏子さんが“死と向き合っている”と言ったけれど、ぼくもまったくそこまで同じ考えで、さらに大造じいさんの方から見ると、残雪とずっといっしょにたたかってきたから、ライバルみたいなもので、ライバルとして最後迎えたかったんじゃないか。

裕太 …残雪は、ハヤブサとたたかい傷を受け、くたびれている。くたびれているときに撃ったら卑怯だ。だから、ぼくは残雪を殺さないと思う。

                  ※

T  …ここで『ぐっと長い首を持ち上げました』と書いてあるでしょ。ここからは、どんなことが読み取れますか。

貴大 …残雪は、「助けなくたっていい。つかまる…。来るなら来い!」って、そんな気持ちだろう。

博之 …残雪の中に力があって、それが100%だとするなら、90%くらい使っちゃって、その残りで、首を持ちあげたと思う

蒼空 …ぼくは、博之君と似ているけど違う。100%の力を残雪は使っちゃったと思う。使ってしまって、それなしに、長い首を持ち上げていると思う。

奏子 …残雪が首を上げる―。それは、ふつうの言い方だけれど、残雪にとって今、首を持ち上げるのはとっても重い。重すぎてやっと持ち上げているのです。

友樹 …“持ち上げる”って、今の残雪には力がものすごくいるという感じで、すごく重いのです。

真子 …このたたかいで、ふつうの鳥なら死んじゃう。残雪は、今生きているのがやっとなのです。力をふりしぼって大造じいさんに向かっているのです。

                   ※

奏子 …『それは鳥とはいえ』を読むと、鳥なんだけど人間みたいで…、その姿が、態度が、大造じいさんの心を打ったのではないかと思います。

聡志 …『ぐっと…』から読んでいると、残雪には頭領としてのプライドがあるっていうか、そのプライドはそうかんたんにはくずれるものじゃないって言ってるみたいなのです。

蒼空 …この『鳥とはいえ』―。この言い方には、もうふつうの鳥じゃないって言っているのです。

聡志 …『もうじたばたさわぎませんでした』と書いてあるでしょ。あわてたり、死にものぐるいになったりしていないのです。

愛詠 …ふつうの鳥だったら、バタバタと暴れたりする。(残雪は)もう暴れてもむだとわかっているみたいなんです。

博之 …人間と鳥とだったらね、人間の方が当然強いでしょ。でも残雪は、ここでずっと大造じいさんと互角にたたかってきた。鳥なのに、そこに感動しているのです、大造じいさんは!

真子 …この残雪の態度って、すごく誇り高い! それが感動させるのです、大造じいさんを!カラスやハヤブサに頭領がいたとしても、残雪ほどではないのではないか。

友樹 …正面からにらみつける残雪。にらみあって、心打たれている。

                  ※

〚ノートから〛

万智 …大造じいさんのガンを必死で助けようとして、本気でたたかった残雪は、ぐったりして、残りの力があまりないと思う。

有紗 …残雪は体がぼろぼろなのに、残りの力をふりしぼっているのは、頭領としてのプライドがある。

千晴 …『いけんを傷つけまいと』…すごい痛いのをこらえてまでしてる。

江里子 …死ぬくらいなら、せめて頭領らしくかっこよく死にたい。

麗  …仲間を守って、第二の敵に最後の力をふりしぼって…。こんなことは私にはできない。きっと残雪は、強いけれどいつかこんな日が来ると思って仲間を指導していた。

紗希 …たたかいを終えて苦しい思いをして、長い首を持ち上げて大造じいさんをにらんでいた。

かおり …にらみつける残雪!

恵子 …殺されるかもしれない敵が来た。足音がした!

和貴 …もうじたばたしても力が出ない。

龍輝 …残雪は、死ぬのかなあ。

あゆみ …残雪の心。もう悔いはない。みんなありがとう…って。

真季 …にらみつけてるって“いかく”してるのかな。

麗羅 …白と紅の闘い!(ハヤブサとの闘い場面)