物語を読む『大造じいさんとガン』③    2024,6,30ブログ

  『知り知り知り隊スーパーⅤ-1』№161(2004,2,23)号より

《はじめに》

 『大造じいさんとガン』の授業記録の3回目。子どもたちの意見のやりとりが楽しい。大造じいさんの残雪に対する心について、微妙な思いがあるのではないかと言う子と、そうじゃない「残雪を何とかしたい思いでいっぱいなんだ」と言う子と意見が分かれている。こうしたことが自由に交わされる教室であったことが嬉しい。そして、夢中になって意見を言う子どもたちが愛おしい。

 本日とりあげた学級通信には、蒼空君の様子が書かれている。図書室で椋鳩十の本を見つけ夢中になって教室で読んでいる姿について。もう1つ、授業記録の最後に蒼空君の授業中の発言に対する感想が書かれていて“この感想が持てるっていいな”と思った。

 彼は、こう書いている。

“今日は、意見に賛成したり反対したりして、自分に自信がつきました。先生の言った通り、恥ずかしい意見なんてないんですよね” (2024,6,30記)

 

【本文】

 大造じいさんは、このぬま地をかり場にしていたが、いつごろからか、この残雪が来るようになってから、一羽のガンも手に入れることができなくなったので、いまいましく思っていました。

 そこで、残雪がやって来たと知ると、大造じいさんは、今年こそはとかねてから考えていた特別な方法に取りかかりました。

 

蒼空君、椋鳩十(の本)を読み始めた

 ◆蒼空君のつぶやき…「おもしれ~よ。すごいおもしろかったよ」

良  …大造じいさんは、毎年この沼地に来るんだ。

貴大 …昔からここを狩場にしていて、ここに残雪が来るようになった。

一浩 …この沼地には、毎年ガンの群れがやってくる。

和貴 …この沼地は、大造じいさんとガン(残雪)との戦場みたいです。

貴大 …『いつごろからか』って書いてある。残雪がこの沼地に来るようになって、ガンが獲れなくなったってことは、昔はよく獲れたのです。

愛詠 …私はここで思った。残雪が来てから、大造じいさんのガンを見る目が変わったように思う。残雪を見ると、心の中がツーンとするっていうか、何か光景が広がって、鉄砲がなにか外れちゃうっていうか…そうなる。

真子 …残雪が仲間を守っているでしょ。それで獲れなくて、悔しくて「くそーっ、このガンめ!」そんなふうに思っている。

奏子 …大造じいさんは、ガンが手に入らなくなったことを残雪のせいにしてるけど、実際何かわたしは、大造じいさんの方も心に迷いがあって撃てないっていうか…。じいさんの方にも原因があるような気がする。

聡志 …今の奏子さんの考えに言いたいんだけど、残雪は頭がよくて、撃とうと思ってもうまく撃てなくて、だから後の文章にあるように、『いまいましく思って』いるんだと思う。大造じいさんは、残雪の方が自分より上ってことが、むかついてるんだと思う。

良  …ぼくも、聡志君とまったく同じだと思うし、もう1つ言うなら、自分より残雪の方が上ってことにむかつきながら、またやってもいつも逃げられて、そのことでまたむかついていると思う。

友樹 …奏子さんは、大造じいさんの心が迷っていると言ったけど、それは違うと思う。やっぱ、忌々しく思って、つかまえられなくて、悔しくて「ウゼー、こんなやつ!」と心で思っていて、見つけたら迷わないで撃つと思う。真っ先に撃とうとして、一羽でも獲れたらワーワー喜んで、気持ちを爆発させると思う。

貴大 …つけたし。大造じいさんは、悔しくて撃ちたいんだ。でも、ずっと毎回逃げられていた。

蒼空 …ぼくは、聡志君に賛成。大造じいさんの心は“まよっている”んじゃなくて、一羽のガンさえ獲れなくて、いまいましく思っている。だから“まよって”なんかはいないと思う。

T  …奏子さんの発言よかったね。問題提起になって何と5人もの発言につながり深まりました。

                     ※

裕太 …『今年こそは』という言葉から、前も同じようにしたんだけど、全部失敗していたんだ。いろんな方法でやったんだけど…。

良  …それは違うんじゃないか。『今年も』って言うけど、ダメだとかじゃなくて、いっつも“やってやろう”って気でやったと思うし、それにいつも同じ方法でしてきたんじゃない。

愛詠 …残雪を獲らなくちゃあって思ってる。生活がかかっているし、だから決意しているんです。でも、どっかひっかかるところがあるんじゃないかな。

聡志 …ぼくはそうは思わない。だって『かねて考えていた』と書いてあるでしょ。つまり、残雪を獲るのに失敗して、1年の間ずっと残雪を獲る方法を考えていたんです。「今度はたぶん失敗しないぞ!」って、そういう気持ちでいるんだ。

貴大 …毎年、失敗していた。でも、『かねて』―つまり前から違う方法を考えていて今度こそっていう気持ちなんです。

一浩 …ぼくも『特別な方法』って書いてあるから、今度こそはとってやるぞっていう気持ちでいるんです。

友樹 …ぼくは思ったんだけど、この『特別な方法』というのは、他のガンに対してではなく、残雪に、つまり頭領の残雪に対してだと思う。

和貴 …大造じいさんにとって、秘密(の方法)なのです。

T  …むっ! 秘策か! なるほど鋭い。

愛詠 …(大造じいさんが)考えていた方法についてだけど、ふつうのやり方で近づくとうまくいかないでしょ。気づかれて…。たぶん、ねずみとりみたいなワナを使うんじゃないか。

聡志 …そのしかける場所というのは、ガンたちが休息する場所だと思う。

貴大 …大造じいさんは、前からきっとその方法を考えていて、狩り方の特別なやり方なんだと思う。

良  …やっぱり(この『特別な方法』と書いてあるから)、ずっと殺したい、そして売ってやろうと考えていた。

一浩 …だから、愛詠さんは、大造じいさんの心にひっかかるものがあると言ったけど、そうじゃなくて、撃ちたい気持ちでいっぱいなんだと思う。

奏子 …わたしも、この『特別な方法』というところを読んでいて、今まで心にひっかかりがあるように思っていたけど、そういう気持ちは捨てているように思いました。

真子 …『特別な方法』について考えた。つまり、昨年までは残雪に勝てないでいたんです。でも、今年は相手に勝つという思いが強いんです。

裕太 …残雪のことだけど、残雪は『大造じいさん』のねらっていることなんか知っていて、わかっていて、仲間をキケンにあわせないようにしているんです。ねらっていると思えば、すべて(仲間を)ひなんさせちゃうんだと思う。

麗  …いま大造じいさんは、「今年こそつかまえてやる」―そんな思いでいっぱいで、すごく生き生きしているように思います。

蒼空 …そこで言いたい! 大造じいさんってね、いま“生き生きしてる”って言ったけど、ぼくは、前からずっと“生き生きしてる”と思う。

T  …麗さんの言葉、蒼空君の言葉、合体できますね。常に気迫が充満している大造じいさん。でも、毎年、残雪に逃げられて悔しく思う。でも、新しい『特別な方法』で「今年こそ!」と思って、ふだんよりもっと“生き生き”と目を輝かせ、体にやる気をみなぎらせている…そんな姿ね。

良  …ぼくは、ここの文全体をまとめて。(大造じいさんと残雪の)“たたかい”の前みたいです。

T  …“たたかいの前”か。(この場面を表す言葉)いいなあ。

 

〚ノートから〛

有紗 …毎年、大造じいさんは、残雪に負けているんだな。だからきっと最後の手段にとりかかったんじゃないか。

麗羅 …大造じいさんの心の中…。「ウシシ…、残雪め、いまに見ていろ!」。ウーン、これって悪だくみみたいだな。

江里子 …『今年こそ』って書いてあるから、ここ1・2年はガンが手に入らなかったんだ。

紗希 …『特別な方法』って、すごく…、いやものすごい方法だろうな。

龍輝 …きっと「残雪をぜったい獲る」という気持ちなんだ。

蒼空 …今日は、意見に賛成したり反対したりして、自分に自信がつきました。先生の言った通り、“恥ずかしい意見”なんてないんですよね。