5年1組 子どもたちの詩から ③    2024,6,22ブログ

《はじめに》

 詩『石段』を読んで「ぼくらも詩を書いてみようよ」と子どもたちは挑戦した。ブログは3度目の詩の紹介。ふだんあまり意識していなかった身の周りの出来事や世界が、詩を書くことによってその子の中に形を結んでくる。詩を書くってそうした意味で大切な時間なんだと思う。題材の取り上げ方も書かれた言葉も、どれもその子らしく独特の個性が浮かび上がって来て読むのが楽しい。(2024,6,22記)

 

【詩】 虹       奏子

虹は なぜカラフル

虹は なぜさわれない

虹は ときどきしかでない

しかも 雨あがり

しかも 空が真っ青なとき

 

虹は がんこだと思う

自分がでたいときしかでない

見たい人がいるのに

自分さえよければだ

 

虹は キレイだ

虹は 美しい

まるで まぼろしのようだ

しかし 同じ色

いつも いつも 同じ色

少し あきる

やっぱ あきる

 

虹 虹 虹

がんこだなあ

同じ色しかつかわない

色をかえた方が

キレイなのに

自分だけがキレイだと思っている

そんなに

目立ちたいのかなあ

 

小さい時

初めて虹を見た

そのころから

虹の絵をかくようになった

初めて見た時

わたしはどのような感動を

胸に感じたのだろう

 

虹はこのごろでない

環境がはかいされているからだろうか

そうであれば

虹がかわいそう

人間の原因になる

環境は重要なんだなあ

 

虹は元気かなあ

 

🌞この詩の心をとらえるところ。ぼくは「虹はがんこだなあ」に感動した。恐竜たちも虹を見ただろう。太平洋を航海する人たちも虹を見ただろう。おじいちゃんやおばあちゃんも、お父さんやお母さんも虹を見て、子ども時代きっと胸をときめかせたと思う。美しい虹のがんこさ! 何てすてきな表現だろう。

「虹は元気かなあ」もいい。虹と奏子さんが対等に向き合って対話しているんだ!

 

 

【詩】 犬歯      真子

ガツン

「いったーい!」

体育の時間にけがをした

まあ どこにでもあるようなけがだ

口を切った

友だちに

「大丈夫?」

「大丈夫?」

と聞かれた

痛かった

ズキン ズキン

けっこう血が出た

歯が なんだかグラグラする

 

その日 歯医者に行った

歯のぐらつきは大したことなかった

でも…

かなりショックなことがおこった

レントゲンに写った上の犬歯

なんで?

永久歯の根がないじゃん

え、なんで?

お兄ちゃんにはあるのに

お母さんも犬歯の根がないんだよね

これって 遺伝?

だろうなあ…

 

ずっと大切にしてきた歯

ずっとさぼらずに歯みがきしてきた歯

ちゃんとならんでいたのに

すごいショック

まだ抜けてないけど

乳歯だからいつかはぬける

いやだなあ

今までお母さんの歯に

「もしかして、お母さんて昔、きゅうけつき?

 だから血を吸いすぎて犬歯なくなったの?」

なんて言っていたのに

今度は自分が…

 

まあ 犬歯がぬけても

自分は自分

それもチャーミングでいっか!

よっしゃ!

思いっきり笑っちゃお!!

 

🌞こういうことを詩に書けるって、つらさをのりこえたからだよね。真子さん、そうだよ。「チャーミングだよ! よっしゃ! 思いっきり笑っちゃお!!」―。ぼくは、ここを読んで、真子さんの心の悩みとそれをのりこえてようとする力を見る。もうそれだけで、あなたは美しい! だれにも真似のできない心の深さとゆたかさが生まれている。お母さんがこの詩を読んだら、真子さんの輝きは、ぜんぜん変わらないし、今までよりもっともっとチャーミングだと言ってくれると思うな。

 

 

【詩】 本の世界      千晴

本というのは

不思議なものだ

読んでいると

こことは別の

想像力だけでつくられた

ちがう世界へと

みちびいてくれる

 

本というのは

不思議なものだ

読めばいくらでも

想像の世界を

つくっていける

 

本というのは

不思議なものだ

一冊読んだ

だけなのに

その次も

その次もと

読みたくなって

つい図書館にくるまえに

本屋に行って

買ってしまう

 

本というのは

不思議なものだ

はまった本なら

何回読んだって

あきることは

ないのだから

 

🌞本の世界に混じり込んで、魔法の世界にあそぶ。わたしもいっしょに壁を登り、脱出し、冒険をする。チャイムが鳴って授業が始まると、しばらくお休みするけれど、本の扉をまた開くと、そこはあふれだす文字ばかりなのに、わたしの体も心もすいこまれたように本の世界へ飛び込んでいく。ぼくも5年生や6年生の頃、夢中で読んだ本があって、千晴さんの詩、とてもよくわかります。時々今でも電車で本を読んでいると夢中になって乗り過ごします。

 

【詩】 チャッピー      あゆみ

私には、とんでもない弟がいる。

顔は細長いし

体は長くて、ほぼ全身茶色。

弟の名前を呼んでも、

「ワン」とか「ク~ン」しか言わない。

服を着たってあまりかわらない。

 

ある日、弟といっしょに散歩に出かけた。

一匹、犬がよってきた。

チャッピーは「ワン」とほえながら

その犬をおいかけた。

口からは白い息。

ベロまで出てる…。

チャッピーが遊ぶのをやめた。

だいてみると、足のうらにガムがくっついてた。

私が手でとろうとしてもとれない!

しょうがないから家へ帰ってハサミで切った…。

そして、その日の散歩はおしまい。

ご飯を食べて寝る時間。

チャーチャンは、もうおねむ。

いっしょのふとんでねた。

耳がめくれていた。

耳に息をふきかけた。

チャッピーは前足で耳をかいた。

何か、またまで開いている。

ぐっすり お休み!

チャッピー。

 

🌞チャッピーは、あゆみさんの本当の弟みたいだね。いっしょに何でもしながら育ってきたんだ、きっと。だから、あゆみさんが悲しむとチャッピーにはわかって心配になる。チャッピーがションボリしていると、きっとあゆみさんの一日も元気がない。フッと息をふきかけられて、チャッピーは安心して幸福な気持ちになっているだろうね、きっと!