5年1組 子どもたちの詩から①    2024,6,20ブログ

《はじめに》

 渋沢均さんの詩『石段』をクラスみんなで味わった。授業を終えたときぼくは言った。

「ぼくたちも、何げない日々の中から心を動かされたことを題材にして詩を書いてみようよ」

 すると、みんなが詩を書いた。ぼくは学級通信に毎日2人くらいずつ掲載して全員の詩を紹介した。

 どの詩も、一人一人の子どもたちの生活や、その子にとって何ものにも代えがたい生きてきた歴史が込められていて心を動かされた。

 ぼくは、それぞれの詩に、その子への思いを込めてコメントを書いた。このブログでは、その中から何篇を紹介したい。一篇の詩に、教師であるぼくがどんなコメントを書いたか、若い教師のみなさんが読んでくれたらうれしい。「ああ、こんな書き方もあるんだ」と。そして、もう1つ。子どもたちが、詩の形にこだわることなく、書きたいなと思うことを自由に書いているところを。

 感想コメントについては、ぼくの“まねっこ”をしなくたっていい。君の、あなたの、真っすぐな心を、自由にとらわれることなく、お手紙のように届けてあげたらいいなと思う。(2024,6,20記)

 

【詩】 ムムコのはり山   かおり 

(※ムム…かおりさんが大切に飼っていたハムスター) 

ハート型の針山に

「ムム」とぬいつけてある

それを見ると

なんだか

「ハー」と、ためいきをつきたくなる

それは、ムムの思い出がつまっているからだ

ムムにあげるつもりでいた

ムムは、世界で一番好きだった

だが、ムムは

十月十日に 死んでしまった

その日は、ずーっと泣いていた

泣きながらムムのお墓をつくった

学校でも泣いた

なんだか心の中で

「自分が情けない」と思った

だけど 泣き続けた

涙がかれても泣けそうだった

だけど、今は、泣かない

それは、ムムの思い出が針山につまっているから…

 

🌞ムムと先生は会いました。家庭訪問をした時です。かおりさんにベタッとはりついていました。かわいいムムでした。心の深い友だちだったのですね。ハート型の針山も知っています。夏の自由工作展に出品されていました。泣いて、泣いて、泣いて、心が深い深い悲しみを支えてくれたんだね。かおりさんの心の伝わってくるムムへの思いを込めたすてきな詩です。

 

【詩】 国語辞典          良

国語辞典は物知り

いろいろなことを知っている

国語辞典は物知り

 

国語辞典は物知り

国語辞典は頭の中では

いろいろな言葉が

うようよしている

かんたんな言葉から

むずかしい言葉まで

なんでもわかる

 

編者は金田一京助さん

この国語辞典をまとめるなんて

すごい人だなあ

この人のおかげで

国語辞典が物知りになった

国語辞典は物知り

 

🌞国語辞典を家から持ってきて辞書引き大会をしていたら、ひとつの言葉を引いた後、近くに並んでいる言葉が目にいって、みんなおもしろい言葉を見つけその意味を読んだ。楽しみ始めるとすごく楽しい。魔法の言葉辞典だ。不思議な楽しさの発見が良君の詩からたっぷり伝わってくる。

 

【詩】 フレンズ      貴大  (※フレンズ=野球チームの名前)

三年のころ

初めて練習に行ったとき

どんなチームかなあ、と思った

坂本君につれられて行った

とても楽しそうだった

それで入った

 

夏の合宿

川遊び楽しかった

でも野球の練習苦しかった

血まめができた

 

四年生

春の大会、負けた…

そして、秋

春の屈じょくから半年ちょっと

夏の合宿の成果あり 優勝

うれしかった

 

そして、オフ

やっと一年が終わった

それから、五年

ぜんぜん勝てなくてくやしかった

そして、六年生

品川レインボーズと戦って勝った

この調子で連勝したいです

あとはただ

日々前進していきます

 

🌞ダイエーホークスが大好きな貴大君。キャッチャーミットをかまえる。校庭球技クラブで、その姿を見たことがある。かたちの決まったいい姿勢をしていた。思い出をふりかえりながら、「今、ぼくは伸びています!」そんな声が聞こえてくる。終わりの2行、3行が光っています。心の伝わってくる詩です。(※今はソフトバンクですね…2024年)

 

【詩】 ひらがなボード    友樹

あ・い・う・え・お

心なしの音で『ひらがなボード』が鳴っている

『ひらがなボード』には涙が…

ウルトラマンのはり紙

テレビに映る森林

見るものがみんなぼやけて見える

ぼくは、泣いている

お母さんにしかられて

泣いている

お母さんは、まだやらせる

か・き・く・け・こ

今でも

『ひらがなボード』を見ると

そのことが目にうかぶ

あの時はやだったけど

ひらがなが読み書きできるようになった

 

🌞悲しかった思い出が心の中いっぱいに広がってくるんだ。心の中で支えきれないくらい辛かったんだね。みんなみんな、そんな思い出を持っているんだよ。でも、友樹君はそれを書いた。すごいなあ。詩を書くって、そんな心を乗り越えて生きることにつながっているんだよ。