詩の授業・『石段』(渋沢均作)②         2024,6,14

《はじめに》

 渋沢均さんの詩『石段』をどこで見つけたか。これは『少年少女詩集』(みついふたばこ編、彌生書房、1986年)を読んでいて「あっ、この詩を子どもたちと読んでみたいな」と思った。この詩集は、とても丁寧な作りで読み応えがある。新川和江さんの詩『ブルーブルーブルー』もこの詩集で見つけて、子どもたちと楽しく学び合った。この詩の授業は当時発行されていた教育雑誌(『子どもと教育』特集『詩のある授業をつくる』あゆみ出版、1995年2月号)に執筆した。この時、ぼくの実践記録について編集を担当してくださったのが分部恭子さんだったと思う。編集上のお手紙のやりとりだけだったと思うが、後に雑誌『教育』の編集で出会った時、ぼくのことやこの詩の実践について覚えていて下さり恐縮した。思い入れのある実践でこのブログでも今度、紹介してみたいと思っている。

今日のブログは昨日の授業の続き。桧山の先生たちが見学して下さった1時間の様子をそっくり伝えている。授業の途中でチャイムが鳴った。この続きは翌日、再び子どもたちと語り合ったがそれはまた明日。(2024,6,14記)

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T  …『石段に日はながれ』と書いてあるね。お日さまの表現はいろいろある。

 ・日が[………]

 と、書くと、どんな言い方が予想されますか。

Ⅽ  …日が落ちる

T  …よく知っているね。

Ⅽ  …日がのぼる 日が暮れる 日が経つ 日が射す

T  …たくさんあるね。では『日は流れ』という表現は、どういうことを言っているのだろうか。

愛詠 …石段に日があたって、灰色の石段がオレンジ色になっている。

貴大 …ぼくは、時が流れていった―と読める。

聡志 …月日が流れていった。

博之 …読んでいると、だんだん石段が真っ赤に染まっていっているみたい。

良  …時間が、朝からしだいに夕方の方へ…そんな感じ。

一浩 …日が動いていくような。

奏子 …石段に日がさして、オレンジ色になっていく。

T  …次を読むと『石段を足だけが通っていた』と書いてある。この『足だけが』ということから思うことはありますか。

友樹 …石段なんて大したことじゃないでしょ。でも、そこを人間が通って行く。それを『足だけが』と書くと、さみしいような、孤独みたいな、そんな感じがする。

良  …人が歩いている様子を伝えている。

貴大 …これを読むと『足だけ』動いて見える。

T  …すごいね。この書き方から頭の中のイメージに『足だけ』が通って行くようすが浮かぶといういのだ。

愛詠 …足で歩いているんだけど、『足だけが』と書くと、強調している。そのようすに感動して、それを伝えている。

奏子 …『足だけが』…そこは子どもが遊んでいない。見ている人・作者…独りぼっちでいるみたいな…。

聡志 …石段って、ただ踏まれるためだけみたいにある。ただ利用されてだまってそこにあるみたいな感じ。

裕太 …この石段、ずっと大切にされてきたと思う。子どもたちなんかも、きっと鬼ごっこなんかで通っている。

T  …『石段に老人がすわり/石段で風車が鳴っていた』

良  …疲れたなあって老人がきて座っている。子どもを相手にしてやってきて子どもは遊びはじめていて…。

T  …すてきなイメージだね。

愛詠 …老人が座っていて、石段のとちゅうにね。疲れていて、どこかで風車が鳴っているのが聞こえる。何かその音を聞いて気持ちよさそうに座っている。

博之 …子どもと一緒に石段に来た。子どもはあたりでいたずらしてて、老人は座っている。

聡志 …その老人は、ずっと前からここへやってきた。何か座って、石段の思い出をなつかしんでいるんだ。

友樹 …ぼくのイメージだけど、きっと3・4歳の子をその老人が連れて来た。その子どもを見つめながら「えへへ、かわいいなあ」なんて見ている。

貴大 …この石段だけど、すごく長い階段でね、老人はそのとちゅうをのぼっていて疲れて座ったの。下の方でね、お祭りか何かの時のように風車を売っていて、その音が聞こえてくるんだ。

T  …貴大君のイメージ、すごいなあ。

蒼空 …ぼくは、ここを読んでいると石段が生きているみたいで、風車が鳴って、その音は何かしゃべっているみたいなんだと思う。

裕太 …おじいさんは、子どもの頃の自分を思い出しているんだと思う。石段に座りながらね。きっと子どもの頃、自分もここへきてよく遊んだと思っている。

友樹 …次に『石段はやきいかのにおいがして』と書いてある。“焼きイカ”を落とした人がいる。それが、誰かさっと急いで拾ったんだけど、ずっと石段にしみついている。

良  …ぼくの予想だけど。ここには、もう一人子どもがいて、その子は犬といっしょに石段にいたのだけれど、その犬がピョンピョンと石段をはねている…。

一浩 …もしかして、子どもが遊んでいて、下駄を落としていった。

聡志 …ぼくは、石段に“焼きイカ”のにおいがしてのことだけど、こう思う。一つの焼きイカで匂いがしみつくとは思わないから、ここではいつも“焼きイカ”を誰かが食べていて、そんなところだと思うから、匂いがついているんじゃないか。 

                               チャイム