『わらぐつの中の神様』の授業 №3           2024,5,20ブログ

    ~学級通信『知り知り知り隊』№96(2003,10,29)号より~

《はじめに》 子どもたちは夢中になって語り出す…それを聴くのが楽しいと思う教師でありたい!

 今日のブログは、『わらぐつの中の神様』3回目の授業記録だ。再度読み直してみて驚くことがあった。子どもたちは、物語の一文一文に心を動かし発言しだすと止まらない。夢中になっている。

 ぼくは、こうした文学の授業で―ほかの授業でもそうなのだが、子どもたちが次々に自分の考えを語り出して止まらなくなると、それを聴くのが楽しくてたまらなくなる。ぼくの予想の読みと似ている発言もあるが、少し違った発言も飛び出す。そして驚くような発言も。

 こうした物語の読みの授業に『めあて』を立てることは大切なことだとは思うが、子どもたちが教材と向き合い、あたかも自由を得て飛翔するかのように発言を重ね合う姿の面白さを知っている教師であるか、知らないままの教師であるかは、その教師の豊かな力量形成においてとても大きなものであると思う。指導案の言葉として掲げた『めあて』を深くとらえきれないまま、筋書き通りの授業を進めていく教師であった場合、授業はとても平坦で淡泊なものになっていくだろう。あるいは、教師の強引さが子どもの内的世界を支配し、文学を学ぶ喜びを伝えきれないまま面白みのない授業となってしまう気がする。

 そうした意味では、生意気な言い方だが、若い教師たちには、子どもたちが夢中になって語り合い、「おいおい、もうそれくらいでいいにして、そろそろ次に行こうよ」みたいな授業を、是非自らつくり出し体験してほしいなと思う。一度でも体験すると教師を生きる喜びはそれは深くなると思うんだね。

(2024,5,20記)

 

わらぐつの中の神様が… ~おばあちゃんとマサエの対話を読むみんな~

(あらすじ)

 おばあちゃんは言った。「わらぐつはいいもんだ」と。あったかくて、すべらんし、軽いし…。そして、「わらぐつの中には神様がいなさるで」と。マサエは「そんなの迷信でしょ」と言う。「おやおや、何が迷信なものかね。正真正銘本当の話だよ」…。

 

一浩 …おばあちゃんがまた言ったのは、マサエがそんなに信じていないからだ。

千晴 …マサエにとっては、何かめいわくっぽいな。

裕太 …「そういったもんでもないさ。…」と、後に続くおばあちゃんの言葉を読んでいると、おばあちゃんは、マサエのために言っていて、いっしょうけんめいマサエのことを思っているんだ。

蒼空 …同じところで! あしたスキー靴がかわいていないときのことを考えて、ダメなときのために、念のため助けてあげようって思ってる。

博之 …ここを読んでいると、おばあちゃん対マサエみたい。

貴大 …おばあちゃんは、すごい(わらぐつに)こだわっている。

聡志 …この文全体を通して! おばあちゃんは、スキー靴もかわかないのかもしれないけど、もともとわらぐつをはかせたいと思っている。

奏子 …「わらぐつはいいもんだ」って、思い出している。

真子 …おばあちゃんは、わらぐつがいいって信じ切っている。マサエは「エエッ?」て思っているけど。

麗  …神様のことだけど…。この紙様って、あったかくて、やさしくて、ぬくもりがあるんだと思う。

一浩 …冷たい足をあっためてくれる神様だろう。

奏子 …おばあちゃんのこのときの気持ちを言います。「いいもんだよ。ちゃんとわらぐつが守ってくれるよ」って。

裕太 …わらぐつを作った人の気持ちが、神様みたく守ってくれるっていうか、おばあちゃんにはわかる。

聡志 …「わらぐつの中に神様だって」―この言い方、マサエは信じていない。

愛詠 …おばあちゃんは信じているのに、マサエは信じていない。

和貴 …マサエには、ウソくさいと…。

T  …う~ん、みんなすごい読みだね。

愛詠 …マサエは、信じないみたいだけど、そう思う半分で、もしかしたら…なんて考えているかもしれない。

 「めがねをはずしました」というところで、マサエに聞かれて、ふざけたみたいに思われて、もっと信じてほしくて―何で信じてくれないのかね…って思って、めがねを外して、雰囲気を変えて真剣になったんだ。

貴大 …おあばちゃんは、まじめになると、めがねを外して、顔つきをキッとさせて言うんだと思う。

T  …シャンとするのかな。

一浩 …すごくむきになっているっていうか…。

真子 …よほどわらぐつに思い出があるんだと思う。

一浩 …前にわらぐつをはかせたかったけど、今度こそは、はかせてあげようと思った。

裕太 …おばあちゃんには、わらぐつをはいてのいい思い出があって、マサエにもその体験をさせたいとおもったんじゃないか。

友樹 …ここで真剣に話すでしょ。信じてもらってからはいてもらいたくて。

奏子 …おばあちゃんの心! 「何で信じてくれないのかね」と思って真剣なんです。

博之 …マサエが信じてくれなくて怒っている?

聡志 …みんなの意見に似てるけど、ちょっとあきれている。

 

おやおや迷信なものかね…

麗  …おばあちゃんは、何か自信がある。

あゆみ…おばあちゃんは、もしかしたらこの神様にあったことがあるのかもしれない。

真子 …実際に神様がいいことをしてくれた!

千晴 …わたしも! このおばあちゃんの言い方を読んでいると、何か自信があって、何かできごとがあって、こういう言い方をしている。

博之 …ぼく、ちょっと違ったことを言うけど…。「そんなの迷信でしょ、おばあちゃん」という言い方は、何か強い言い方。なぜかなあ。

千晴 …神様を信じていない気持ちが、パッと出てきたんじゃないか。

愛詠 …人に聞いたりするときは、「~でしょ、おばあちゃん」なんて言う。

奏子 …びっくりしたんだと思う。信じがたいことを言われたでしょ。それで、「そんなの迷信でしょ」が先になった。

友樹 …先になっている方が、強い意味を持って言われています。だから、「おばあちゃん」って言うより「迷信でしょう」の方が言いたかったって言うか…。

奏子 …わたし、思うんだけど、この言葉を言いながらも、ちょっとは信じてみようかなって。もう一方では、うそでしょうって思っているんだけど…。

 

つうんとこおりそうな手

裕太 …マサエはね、ここで新聞紙の玉を入れ続けているけれど、スキー靴がかわいてほしかったんだ。ずっと寒くて氷りそうになるまで、入れていたことがわかる。

聡志 …外の寒さと、このこたつの中と、温度差はすごいだろうね。

真子 …『つうんと』っていう言い方だけど、冷たいってことを他の言葉でいっている。冷たいって言うより、もっとぴったりした言葉で…。

貴大 …寒くて、すごく寒くて、こたつに走って戻ってきたかな。

博之 …『つうんと』って言うと、手の感覚がなくなっている…

奏子 …『すっかりつめこんで』の『すっかり』という言葉から、かわいてほしい気持ちがいっぱいで、つま先まで詰め込んでいったんです。

裕太 …ぼくも『すっかりつめこんで』のところで思ったこと。あした、どうしてもスキー靴をはきたい気持ちがあったんだと思う。それで、ちゃんとかわくようにいっぱい入れたた。あしたのスキーの目標みたいのがあってね、前は1回転んだけど、今度は1回も転ばないぞ…なんて。

T  …マサエの動作から、マサエの気もちを予想してみたんだね。驚きますよ。