5年生・国語の授業の出発は? (6) 2024,3,15ブログ
≪はじめに≫
『新しい友達』(石井睦美・作)の読みの授業記録。今回が最後。少し長い記録ですが、物語の終わりの場面を子どもたちと読み合った1時間の記録だと思います。子どもたちが登場人物に思いを重ねながら夢中で発言しているのが分かります。(2024,3,15記)
うれしいんだけど、バーカ!って感じなんです
~奏子さんの言葉にみんな爆笑~ 『知り知り知り隊スーパーⅤ-Ⅰ』(2003,5,12)号
【授業の場面】 あらすじ
「新しい野中なんだよ。新しい友達って思えばいいんだよ。」
坂本君はそう言ってかけていく。
「変なやつ」
と小さな声で言ってみるひろ! それから、
「新しいまりちゃん」
とつぶやく。仲良しだったまりちゃんを、そう思うのはむずかしそう。でも、ほんの少し気持ちはかるくなる。ひろは
「坂本君、ありがとう」
とつぶやく。
そうか、「変なやつ」ってそういう意味か! 話し合いでわかってきたよ!
麗 …いきなりね、新しい友達だといっても無理があるでしょ。それでね、「変なやつ」って言ってみたんじゃないかな。
良 …「変なやつ」って小さい声でいってみたところ―、聞こえたらかわいそうだからね。
蒼空 …心に傷がつくと思う。
博之 …ぼくね、「変なやつ」という言い方には、ありがとうっていう気持ちが入ってると思う。
T …あっ、すごいなあ。意見がつながってきたね。良君と蒼空君の発言で「変なやつ」という言葉が聞こえたらかわいそうで心に傷がつくってことが話された。ところが博之君は、そこにありがとうっていう気持ちが入っているという。
千晴 …わたしも、この言葉にはありがとうっていう気持ちが入ってると思う。
泰子 …あのね、博之君の考えに似ているんだけど、「変なやつ」って言うのね、うれしいんだけど、バーカ!って言ってると思う。
※泰子さんの言い方が楽しくてみんな大笑い。でも、よくわかる!
愛詠 …坂本君の言っていることって(前から仲良しだったまりちゃんを新しい友達と思えということ)変なことでしょ。だけど、やってみればいいことかもしれないなあって、ひろは心の中で思ったと思う。それで「変なやつ」って言ったんだ。
T …すごいなあ。「変なやつ」の言葉の裏にある意味を具体的に説明してくれた。
友樹 …だからね、この言葉を言った時、ひろも「新しいまりちゃん」って思おうとしたんだよ。
ひろは、どんな顔つきでつぶやいたのかなあ
T …ひろはね、「変なやつ」という言葉と「新しいまりちゃん」という言葉だけど、小さい声でつぶやいているでしょ。どんな顔で言ってると思う? これはね、まったく予想だから自由にどうぞ。
奏子 …ちょっとね、考えながら言ってる。
※ぼくが、ちょっと考える真似をしてつぶやくと、みんな「ワハハ」と笑います。
真子 …(坂本君が)走って行く方を見てね、口をポカンと開けて言うの。
みんな …ワーッと笑う。
T …すごいなあ。書いてはないけど、きのうの学習で、「そうだよ、そうだよ」と言いながら、坂本君が走って行ったんだよね。そっちの方を見てつぶやいたのか。なるほど!
あゆみ …ちょっと両手をポケットに入れてね、石をけりながら言うの。
愛詠 …考えながらね。ちょっと首を横にしてね。
奏子 …顔は、いじわるっぽい顔でね、ちょっと笑いをこらえて言ってる。
※他にも何人か発言してくれましたね。どれも、その発言にあわせてぼくが演技してみせました。みんな笑いながら発言を理解しているようでした。
聡志 …「変なやつ」と言ってもね、坂本君のことを信じているんだ。
麗羅 …本当に「変なやつ」とは思っていないんです。
『変』と『やつ』を考える
T …おもしろいね。「変なやつ」で、深く考えられる。
この『変』という言葉は、他の言葉に言い換えると、どうなるかな?
※みんなの発言をつなげてみるとよくわかります。「こんな意味にもとれるよ」と、たくさんの友だちが発表してくれました。
・異常ということ(聡志) ・おかしい(良) ・気持ち悪い(龍輝) ・バカみたいな(貴大)
・おもしろい( ) ・不思議な(真子) ・かわっている(奏子) ・びみょうな感じ(あゆみ)
・不気味(聡志) ・ヨッパライの人みたいな(紗希) ・何かちがう(千晴)
・みんなが笑っちゃう( )
T …もう1つ考えよう。『やつ』という言葉ね。
※[〇~〇]やつ (と板書する。〇の部分は空欄)
・おもしろいやつ ・すごいやつ ・しおれてるやつ ・ばかみたいなやつ
T …ここからまとめてみよう。『変なやつ』という言葉には、傷つけてしまったり、聞こえたらかわいそうに感じたりする意味もあるね。『変』とか『やつ』という言葉には、そういう意味もあるから。
でも、みんなが発見してくれたように、『変』といってもバカにしてるんじゃない意味もある。『やつ』という言い方にも、そこにはいない人を“すごい!”って認めるような意味があります。
きょう、みんなの話し合いで出たこと(良君、蒼空君、千晴さん、博之君、奏子さん、愛詠さんたちの発言)は、そういう意味があることを深く考えあっていたことなんですね。
坂本君のこと…
恵子 …「坂本君も少しちがったまりちゃんのことを感じて…」のところ―。二年前とはちがった。
良 …ぼくは、そこ全体のところだけど、二つの意味が書いてあるでしょ。一つは、坂本君も感じていたかもというの。もう一つは、私のことを坂本君が心配してくれたから…というの。ぼくが、考えると、後の方だと思う。
T …そうか。ひろのことを心配してくれて声をかけてくれたと良君は考えるのね。
聡志 …それだけ一生懸命に考えてくれた。
友樹 …「坂本君も感じたのかも…」と書いてある。ひろも感じていたということです。
麗 …「坂本君も感じたかもしれない」(まりちゃんが少し前とは違った感じになったということ)というところで、わたしはまりちゃんがロンドンから帰って来て、よりまりちゃんらしくなったでしょ。授業中、いっぱい発言したり、休み時間女の子みんなにかこまれたりして、そういうハキハキしたまりちゃんの様子を見て、坂本君も感じたんじゃないかって…。
T …「少しちがったまりちゃん」という文の意味を、前の学習をつかって具体的に説明してくれましたね。すごくいいよ。
奏子 …『それとも』という言葉が使われているところで、二通りということ。
博之 …あっ、ぼくも同じところで。“二つの選択”って書いた。(書き込みのメモのこと)
T …二つの選択、二通りの見方をひろがしていたということね。
奏子 …「かもしれない」だから、ひろの予想なんです。
千晴 …坂本君のことを考えているけど、(そこは)ひろと同じになっているんじゃないか。
一浩 …「一生懸命考えてくれたのかな」で、それほど心配してくれたのだと思う。
貴大 …坂本君はね、自分のことでなくて、ひろとまりちゃんのことを心配してる。真剣に二人のことを考えてくれている。
愛詠 …どうして、こんなに(坂本君は)考えてくれるのかなって思いました。
ひろの気もちは重かったんだね!
蒼空 …新しい友達、新しいまりちゃん、…ここで思ったこと。親友だけど新しい友達!
T …うーん、よくわかる。
真子 …心の中で、ひろは、たくさんの言葉を言って、較べていたと思う。
一浩 …初めて知った子みたいにって。転校生みたく考えればいい。
友樹 …(そのように思いたいんだけど)親友だったからむずかしそうなんです。
良 …つけたし! 大好きだったから、よけいむずかしい!
奏子 …新しい友達、新しいまりちゃん…って考えることって、ちょっとやってみたいんだけど、むずかしそうです。
愛詠 …やってみようとすればやれるかも…。できるぞ…って思いながら、やっぱりできるかなあって、ひろは考えている。
恵子 …「ほんの少し気持ちは軽くなってきた」ところで。ひろは、いろいろ考えて、気持ちは重かったのです。
T …すごいね。教科書には「ほんの少し気持ちは軽くなった」としか書いてない。恵子さんは、その言葉から、ひろの気もちが重たかったってことを読み取っているのです。
あゆみ …その思い気持ちが軽くなってきた…。
聡志 …ひろはね、坂本君の言ってくれた言葉がね(新しい友達)支えになったんじゃないかな。
T …坂本君の言葉が、ひろを支えてくれた…か。すごいなあ。そんなふうに読めるんだ。
貴大 …「坂本君ありがとう」って書いてあるでしょ。(ぼくは、坂本君って)けっこういい人じゃんって思った。
麗 …「変なやつ」って言いながら感謝してるんです。
T …麗さんの言葉で、ほら、初めの学習のところとつながったね。
良 …この文章をみると「ありがとう」って思った。「坂本君ありがとう」って「ありがとう」が二回出てくる。それほど気持ちが強かった。
友樹 …すごく、うれしかったんだ。
博之 …これでね、心の穴が消えていった。
T …“心の穴”か! それが消えていく。すごいこと言うね。
愛詠 …いまのまりちゃんと、前のまりちゃんと少しちがっていた。でも、これから何かやっていけるような気がして、気持ちが軽くなったということです。
T …これからやっていけそう…という気持ちになれたって言うんですね。
T …気持ちが軽くなることって、恵子さんがその逆を読み取ってくれて、気持ちが重かったのだと言ってくれましたね。気持ちが重いということは、どういうこと?
( ) …まだ不安がある! ってこと。
( ) …悩みがあった。
T …そうだね。その不安や悩みが少し軽くなったんだ。それが読み取れましたね。
♪チャイム