季節がメチャクチャじゃないか!          2024,2,22 ブログ

 20日、久しぶりに晴れて午後の時間、散歩に出ることにした。

外は温かそうだったので、シャツの上に薄手のセーターを着てウィンドブレーカーを羽織った。秋の終わり頃からずっとロッカーにしまっておいたものを引っ張り出したんだ。

 小さなリュックを背負い野球帽をかぶった。

 集合住宅裏の駐車場に出て歩き始めたとたん、立ち止まり思わずつぶやいた。

「あっ、これは暑くなる!」

 ぼくは、薄手のセーターを脱ぎ、丸めてリュックに入れた。

 ところが、これでは済まない。

「暑いよ! 2月の気温じゃない…。生ぬるい空気が肌を包んで気持ち悪くなる…」

 高架橋の下で、再び立ち止まりウィンドブレーカーを脱いで腰に巻いた。それからシャツを腕まくり…。何だか春の散歩だ。いや初夏の散歩スタイルになった。

 道路わきの民家の庭に立つ大きなモクレンの木の蕾は、空に向かって小さなロケットみたいな体をふくらませ、いつでも飛び立てる準備、いや花を咲かせる準備をしている。

 耳を澄ますと、彼らのお喋りの声が聞こえてくる。

「まだだ! まだ、まだ、まだだ! もう少し待て! いま花を咲かせるのは速すぎる…」

 

 東高根森林公園に着いてぼくが一番にしたこと。それは、自動販売機で冷たい水を買うこと。冬の間、こんなことは一度もなかったんだけど…。ゴクゴクと水を飲む。おいしい!

 木桟道に備え付けられたベンチに座り文庫本を取り出して小説を読む。西條奈加の小説。小さな犬を連れた人たちが、幾人ものんびりと側を通って行く。

 この日は、久しぶりに妙楽寺の裏庭にも寄ってしばらく本の続きを読んだ。この間、工事があって修復された水琴窟が「コキン、カン」と、きれいな音を立てていた。

 

 ところがだ。昨日21日は、朝から雨、雨、雨。冷たい雨。

 朝の気温は、それほど低くなかったけれど、午後の3時を過ぎた頃から少しずつ冷えてきた。

 午前中、大井町周りで上野を訪れ、東京都美術館で開催されている『印象派モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵展覧会』を観に行った。館内はけっこう人が混んでいて、ほとんど絵の前には立てない。横から、後ろから観る。客の集まっていない絵を見つけて側に寄って観る。

 ウスター美術館ってどこにあるか知らなかったけれど、自宅に帰って地図を確認するとアメリカ東海岸に面したマサセッツ州の中部にあった。ボストンから西に70キロ。1898年開館だという。

 絵画は楽しんで観るくらいで詳しくはわからない。

 

 そうだ。今日のブログで何を書きたかったかというと「季節がメチャクチャじゃないか!」ということ。

 それで、突然5年生たちと取り組んだ劇を思い出したんだ。

 『森は生きている』―。マルシャークの作。

 凍てつく冬、新年を迎えるという日、あの気まぐれでわがままな14歳の女王の命令「4月に咲くマツユキソウをとっておいで」のひと言。翻弄される家来たち。

 雪に包まれた森の中では、たき火が赤々と燃え、その周りで12月の兄弟たちが歌い踊り季節を順に受け渡していく。

 歌が聞こえる。1月が歌う。

♪燃えろ、燃えろ、あざやかに―

 夏はカッカと照るだろう

 冬はなるたけあたたかく

 春はやさしく照るがよい

   ※すると、みんなが歌う。

♪燃えろ、燃えろ、あかるく燃えろ

 消えないように!

   ※『森は生きている』(マルシャーク作、湯浅芳子訳、岩波少年文庫)より

 5年生たちと取り組んだ劇では、作曲家・林光さんの曲を歌った。懐かしい。

 

 さて問題は、日本の季節が、地球全体の季節が、いま、おかしくなっているということ。14歳のわがままな女王様の命令が、あたかも当たり前みたいになってしまうくらい、ごちゃごちゃと季節がまじりあってしまった感じ。そして、今日の気温は、東京では5度程度だという。一昨日に較べて急激な寒さだ。でも、こっちの方がふつうかな。

 子どもたちに未来を託す上で、今の気温の変化に対し、こんなのおかしいよ! と叫びたい。おそらく多くの人たちも感じているだろうけど。

 冬は冬のままで、春は春のままで、夏は夏らしく、秋もまた秋らしく… 

 12月の兄弟たちの歌う歌を改めて味わい噛みしめたいなと思った。

 そうした思いが描けない状況が少しずつこの地球を覆っていることの不気味さ。何だかなあ…と思う。