1泊2日、学びの旅、都留へ                   2024,2,11

 久しぶりに都留文科大学を訪ねた。2月10・11日の2日間。

 10日の朝早く家を出た。南武線の電車で立川へ。

 立川駅からは特急『あずさ号』に。5号車12番の窓側席。2週間前に切符を買っておいた。八王子駅から全席がうまった。

 窓から見える景色を楽しむ。山が見える。渓谷が見える。小さなトンネルが続く。

 大月駅に着くと携帯が鳴った。ショートメールだ。

「先生、いまどこですか?」

 笑う。Tさんからだ。

「いま、大月駅です」

 メールに返信していたら富士急河口湖線の電車が動きだした。あたたかな陽射しの中を電車が走る。電車が止まる度に駅名を確認していたら、いつのまにか都留文科大学前駅に着いた。

改札口を出て階段を降りようとすると、下の小さな花壇の縁にTさんが腰かけていた。笑顔が弾ける。驚いた。ぼくの到着を待ち、迎えに来てくれたんだ。

「ありがとう!」

 2人でお喋りしながら大学に向かう。

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 10日の午前中は『明日へのとびら』―。

 春から教師となる学生たちに向けて、教職支援センターの先生たちが、それぞれの思いを込めて熱いメッセージを送った。子どもたちとの出会いの工夫、豊かな時間や場の作り方、その根底となる子ども観や教育観などを、魅力たっぷりに伝えていく。いいなあと思う。

 次に、都留を卒業し教師となった若い仲間4人が登場。彼らの話も素敵だった。

 4人の若者が、教師となったばかりの頃を振り返り、「苦悩と失敗の物語」や「笑いと涙とちょっぴりウルウルする物語」を、エピソードを交えて率直に語ってくれた。

 そこには、言葉の背後に教師を生きる深い喜びがあふれていて聴く者の胸をふるわせた。若い仲間が語るって素敵だなあ。

 それから、小学校と中学校とに別れて輪をつくり語り合った。4人の仲間の教師たちがグループに加わる。質問を受けて答える。ぼくは小学校教師になる学生たちの輪に加わり、みんなの質問や話を聴いてぼくなりの思いや考えを語った。

「4月の出会いはどうしましたか?」

「教材研究をしなければならないと思いますが、毎日たくさんの授業をしなければなりません。どんなふうにしていますか?」

「初めての授業参観日、それに続く保護者会、どんなふうにしましたか?」

 若い教師たちが答える。たとえばSさんは、タブレットを開き、そこに書きこんだり写真にとったりした教材研究の具体的場面や板書の事例を見せてくれた。

 ぼくは、昔風の週案への対応と自分なりの教材研究のし方を語った。

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 昼食後は、『重点領域研究会』―。福井雅英さんと山形志保さんを迎えて『子ども理解』の学習会を進めた。

 お2人とは懐かしい出会い! 久しぶりの出会い! 2人は、昨年7月『保健室から創る希望』(福井雅英・山形志保、新日本出版社)を出版している。

 最初に、北海道の高校・養護教諭・山形志保さんが1時間講演。

 様々な困難を背負いながら保健室にやってくる一筋縄ではいかない生徒たちとの対応と、卒業後もなおSOSを発してくる彼女たち(彼ら…も当然いたと思われるが)への細やかで具体的な生活支援を続けていく様子を丁寧に語られた。 

1人の養護教諭として、また人間教師として、どのように彼女たちの日々を支えてきたか、そしてそこにどんな希望を見いだしてきたかを語ってくれた。

 福井雅英さんは、この山形志保さんの実践を早くから注目していた。山形さんの1時間の話を受けて、彼女の仕事の意味と実践の今日的意味や価値を、深く豊かに位置づけながら話してくれた。

とても考えさせられる豊かな時間となった。

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 10日は都留に宿泊。山形さんや福井さんを囲み、支援センターの先生たちとみんなで食事をしながら親しくお喋りした。星がきれいだった。

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 翌11日は朝の10時から、都留文科大学教職支援センター主催のパネルディスカッション。

『いま現場で働く若い教職員を励ますためにできること』―。

 最初に、教職支援センターⅠとⅡから、2人の先生がその取り組みを語った。支援センター1については村上先生が、支援センター2については泉先生が、それぞれ30分ずつ話された。センターⅡの方は、ぼく自身が宮下先生などと共に関わって来た取り組みでもある。

 続けて、福井雅英さんがご自身の若い教師たちを励ます取り組み(滋賀と北海道にふれて)について話された。

 3人の話の中に、山形さんを始め山梨県で働く現場教師たちが登場し実体験にふれた話をしてくれた。谷口さんや村角さんも登場しこの論議に加わった。

 終わって感想・意見交流。

 ぼくは、都留の取り組みや福井さんの取り組みの持つ重要な意味や価値について、さらにはその可能性について思うことを語った。

 続いて参加者が次々と意見を述べた。参加したみんながパネルディスカッションから大切なものを受け取ったのだと思う。

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 午後の12時半、パネルディスカッションは終了。

ぼくは、支援センターの阿部さん・泉さん・宮下さんたちと共に、都留にある『おぎくぼ』という店に行ってうどんを食べた。

店に入った途端、大きな声に迎えられる。

「先生! いらっしゃい! Kです!」

「わあ、Kさん! ここで働いていたんだ! よく似合うねえ!」

 FBでつながっているKさんだ。都留教育を読む会や学びをつくる会などで出会っている。Kさんは、厨房で皿洗いをしたりお客さんの前に出て注文を聞いたりしている。

 4人は、それぞれ好みのうどんを注文して美味しく食べた。

 帰り道は泉さんの車に乗せてもらった。中央高速を走る。2人でお喋りを交わしながら…。

 すると、泉さんの携帯が鳴り、そこから明るく弾む声が聞こえてくる。

「泉先生、いま大月駅でお2人を送りました」

 Tさんからだ。すぐわかる。

「ありがとう。お疲れ様。隣に山﨑先生が乗っているよ。声を聴きますか?」

「ふふふ…」

 向こうから2人の笑い声が聞こえる。それでぼくがしゃべった。

「Kちゃん、Tさん、お疲れ様。山﨑です。聞こえますか?」

 今度は、弾けるような笑い声が返って来た。

「キャ、キャ、キャ! “Kちゃん”だって! フフフ!」

 こんな感じ。それを聞いて泉さんと2人で笑った。ぼくは言った。

「若いよね、彼女たち! 高校生みたいだ!」

 

 2日間の旅、とても内容の濃い“学びの旅