「あま~い!」

 頂いた桃を一切れ口にしたとき、思わず言葉がもれた。

 山梨県A市に住むKさんが自宅で採れた李と桃を持ってきてくれた。


 昨日、ゼミ室の入り口に紙袋が置いてあって、

 「桃は、もう熟しています。できるだけはやいうちに食べてください」

と、丁寧なお手紙がついていた。

 

 とろけるような甘さが口の中に広がった。


 そして、今朝のこと―。

 今度は李を一つ、朝の食卓に並べて皮ごといただいた。


 「…! なんておいしいんだ!」

 一瞬、言葉がでない。

 ゆっくりと味わいながら、そっとひとりごとをつぶやく。

 何だか一人でいただいくのはもったいないからね。


 李と言えば、キュンと口をすぼめたくなるようなすっぱさの味が素敵なんだけれど、今回いただいた李は、ほどよいすっぱさの中に甘さがたっぷりと漂っている。

 熟してちょうど食べ頃の李を持ってきてくれたんだ。


 「先生、李、食べますか」

と、先週のゼミのときKさんが言った。

 「わあ、うれしいね!勿論、いただきます」

 こういうとき、ぼくは遠慮しないですぐ手をあげちゃう。


 Kさんのお祖母さんが、昔から続く畑づくりをやめないで、儲けを度外視して李や野菜をつくっていらっしゃるとのこと。そうだ、ぶどうもね。 

 本当は、こんなにおいしい桃や李、ぶどうが出荷できて、儲けがでるといいのになと思った。


 都留に行くようになってから、ときどき思わぬ知りあった学生たちから

 「先生、食べますか。家で採れたんですけど」

と、秋の収穫の果物をいただくようになった。

 りんご、ブドウ、桃!

「山梨は、本当にいいところだね!」

と思う。


 そんな折、ちょうど一昨昨日のことだけれど、そのA市にあるY小のM先生から電話があって、

「夏休み中の職員研修会に来てくれませんか」とのお話があった。

 日程をお聞きすると8月の21日か22日とのこと。

「22日でしたらいいですよ」と答える。


 午前中に伺うことにしたが、けっこうA市までは遠い。しかし、「甲府まできてくださればそこからは車でお迎えします」とのこと。

 山梨にはずいぶんお世話になっているので、少しでも役立つことがあればうれしい。

 それに特急電車に揺れながら、広がる山々や畑と、そこに暮らす人々の暮らしの営みを想像し眺めるのが楽しいからね。

 「あの道のあの角で、子どもたちが遊んだり隠れたりしているんだろうな…」なんて。