雑誌『教育』8月号が発売された。

 

 若い教師の実践を紹介するページ『毎日がチャレンジ』、今月号は千葉県の公立小の2年目教師・寺園彩奈さんだ。


 題名は『初めての6年生と夢中で生きる』―。


 エピソードは2つ。

 最初に書かれているのは、『自閉症の真也君とのふれあい』について。

 彩奈さんは、大学時代に現代の子どもの困難さの背後にある子どもの生きづらさや願いを仲間たちと学んでいる。実際にそうした子どもとの触れ合いもあった。だから、実践にしなやかな視点が貫かれていてうれしい。


 もう一つの内容は、『運動会、秘密の特訓!』―。

 これが、愉快だ。

 編集者の佐藤博さんが、この文章を読んだときこんな言葉を寄せてくれた。

 

 「秘密の特訓の話、いいね。若者らしい思いが詰まっている。実はぼくも、中学教師の若い時代、おんなじことをしたんだよ」


 寺園さんは、初めての6年生と夢中で生きている。まるで一心同体みたいだ。 

 何としても今年は、わがクラスの所属する白組を優勝させたい!

 だから必死。

 「6時間目が終わったら、帰る用意をして他のクラスにばれないように体育館に行くんだよ」

 彼女は書く。

 「秘密というだけで、子どもたちの目は輝いていました」

 

 いいなあと思う。こんな、寺園さんのあふれだす思いは、6年生の少し斜に構えた心さえ変えてしまう。

 

 リレーで頑張ったんだけど3位だったとき、アンカーのR君が泣いて戻ってくる。すると寺園さんの目にもいっぱいの涙。

 それは、教室に帰るとクラスの子どもたちのこらえきれない涙となる。


 何だか読んでいてうらやましくなる。


 寺園さんからは、年に数回、ときどきふっと思い出したようにメールをいただくのだが、そのときは、「もう、今日、怒っちゃいました。自分が嫌になります。情けなくなります」なんて言葉が飛び込んで来たりする。

 若い教師である、多くのみなさんと同じだ。

 でも、寺園さんは、大きな声で怒ったり、自分を悔いたり、激しく落ち込んだりしながら、少しずつ少しずつ、小さな宝物をつかんでいく。


 いま、困難の真っただ中にいる人にだって、あとで思い出すと、必ず日々のどこかに子どもたちが輝いている瞬間ってあるんだと思う。でも、怒ることがたくさんすぎると、また、子どもとのやり取りでうまくいかなくなると、互いに存在を否定しあうみたくなり、そんなこと見えなくなっちゃうんだよね。


 思い切り寺園さんみたく勇気を出して『秘密の特訓』みたいなことが、できるといいんだけど…。つまらない実践でキュウキュウとするよりも、勿論配慮はいるが、これだけはやりたいと思ったことを思いきりしたら、子どもたちも自分の心もずいぶんかわるんじゃないかな。