若い教師からの悩みや質問が、お会いしたことのない方も含めてときどき寄せられる。

 その中に次のようなものがあった。

 

 ≪最近、子どもとつながれない自分を感じています。

 子どもたちから「うざい」と言われたり、私が前に立つと常にザワザワして静かにならないのです。

 「授業以前に学習規律がなっていないんだ」

と指摘され自信を失ってしまいました。

 こんなとき、山﨑先生ならどうするんだろう…。

 私は、こんなことがしたくて教師になったのかな。

 担任ではないけど、何もクラスに貢献できないで、子どもたちの反応に逆に傷ついている。

 こんな状態で春から担任になれるのかな…。

 でも、先生とお話したりメールをいただいて、ずい分心が軽くなりました…≫

 (※頂いたメールの内容は、少し変えています)

                     ※

 今回は、教師が子どもの前に立ったとき、話を静かに聴いてもらうためにどんな工夫をすべきか、いくつか語っておこうと思う。

 とりあえず思いつく順に…。


1、一人一人の子どもの声に耳を傾け、まずしっかりと聴く。

 ぼくは、自分の話をしっかりと聞いてもらいたいから、子どもの声も丁寧にきちんと聴く。そのとき、他の子どもたちが静かに聴き取るように求める。

 教室は、一人一人の存在が受け止められ、他の誰かから攻撃されたり、粗末に扱われたりすることがあってはならないからね…と子どもたちに話しかける。先生の話もしっかりと聞いてほしいんだよ…と語る。

 友だちの誰か一人、例えば祐美さんが小さな声で語るとき、どこかで手いたずらや小さなおしゃべりがあったら、ぼくは、そっと手のひらを出して祐美さんにストップをかける。

 おしゃべりが止むのを待つ。あるいは最初の段階では、「いま、祐美さんがお話をしているよ。聞いてあげようね。あなたの話はあとで必ず聞きますからね」

 これは、朝の会、帰りの会、学級かい、授業時間のすべてで徹底する。

 授業参観日であっても小さなおしゃべりがあったら、一瞬おはなしをとめて、子どもたちを一人の子の発言に集中させる。これは、次第にぼくのクラスの自然な学級スタイルになっていき、子どもたちの学級をつくっていく誇りの感情に支えられていくようにする。

 

2、教師の話し方でぼくが気を付けていたこと。

 ア、必ず子どもたちの登場するような具体的なエピソードを入れて話す。


 イ、子どもたちが一瞬で耳を澄ましたくなるように、何をどこから話すか工夫  する。例えば会話文から…。あるいは、「先生ね、けさ驚いたことがあるんだ。それはね…」とこんな感じで、子どもたちの顔がすっとぼくを見るように話しかける。


 ウ、ぼくが感じだ素直な思いや気持ちを話す。

  「6年生が1年生と手つなぎ鬼してくれたよね。うれしかったね。君たちは最高だよ」

  「昨日ね、先生ね、大失敗したんだ。…」

 こんな率直な思いを朝礼台の上でも、もちろん教室でも自然体で話す。


 エ、恫喝とか声の大きさとか、相手を力ずくで動かすような話し方はしない。

 丁寧に子どもたちが聴いてくれれば、一つの行動は「さあ、やろうか」と語りかければ子どもはスッと動いていくれるようになる。


 オ、教師自身がつまらないことや面白くもないことは、長々とはしゃべらない。

 短く的確に。

 子どもたちが、いまどんな気持ちで話を聴こうとしているか、彼らの気分・感情・状況等も勿論考慮して語りかける。


 カ、最も大切なことは、「先生の話を聴いてよかった。面白かったな」と思わせる内容にすること。


 ・このためにはいくつかの努力が必要とされる。

 学校の多くの子どもたちの前で話すとき、どう話したら子どもたちが集中して聴いてくれるか、常に考え、努力すること。

 ぼくは、看護当番で朝礼台に立つときや、運動会練習、学芸会練習、卒業生を送る会の練習、それから、卒業生に送る言葉等々で、子どもたちの心がやる気になったり、自分たちに誇りを感じたり、気持ちがふくらむような話し方を考えた。

 ・避難訓練の担当になった2年間は、徹底して地震、火災、自然災害の様々な状況の具体例を調べ、読み、子どもたちが集中して耳を傾け、全校で集まって、みんなで聴き、学んでよかったという話し方をした。

 わずか数分のお話だけれど、子どもたちはぼくが語り出すと真剣に耳を傾けてくれた。

 そして、休み時間にくいこんだときは、断固として子どもたちの休み時間を確保した。

 ※これは、友人の今泉博さんの避難訓練担当物語から学んだこと。


3、本の読み聞かせ(『読み語り』という人たちもいるね)をする。

 これは、6年生の荒れる子どもたちも集中して聴いてくれた。

 絵本には、それだけの力がある。

 現代の子どもたちの中には、ひとときも落ち着いて座っていられない子もいるかもしれないが、みんなが一つになって笑い転げたり、思わず怖さに震えたり、悲しい思いを心に刻んだり…、お話に集中する雰囲気を大切にし、聴き合うことの楽しさを味わわせたい。

 そして、大切なお話や物語、あるいは意味ある言葉に集中し、聴き合えるクラスをつくっていくのだね。