学会初日、武庫川女子大学の入り口に向かうと、外テーブルに座っていた女性がぼくに向かって手を振ってくる。

 「あっ、鈴木さん!」

 ぼくは、気づいてかけより、挨拶をする。


 カナダのバンクーバーにある大学SFUですっかりお世話になった。彼女は、教育学研究者であると同時に、日本からの留学生や研究目的に訪問する大学教師たちの通訳もつとめている。教育・授業・子どもについての微妙な感覚や思い、ニュアンスを見事に伝えてくださる方だ。


 隣にクランディニン先生が座られていた。昨年都留にいらしてくださり、講演をしてくださった。田中昌弥先生の翻訳された著書の中心的研究者でもある。今回は、自らいらしてくださったとのこと。


 さて、受付に行くと、目の前に佐藤隆先生がいらした。

 二人でお話をしていたら、目の前にぼくのゼミ生だった日野さんが現われてびっくりした。友だち2名をつれて名古屋からやってきたのだと。あえてうれしい。


 午後からは、課題研究発表。7つの分科会。ぼくは、渡辺由之君と二人で第Ⅳ分科会「教師の専門性の再検討、教師教育改革の課題」の司会を担当した。

 福井大学教職大学院の取り組みと、石垣雅也さんの「『教師が学び合い、育ちあう場』を自前でつくる取り組み」の2本が報告される。


 二つの報告から、教師教育のあり方や専門性について考えさせられた。

 研究の視点や迫り方は違うが、教育の本質、教師の専門性の本質を、一年の長いスパンを見通してこれまでの教師教育のあり方を越える豊かな可能性をさぐる具体的な取り組みの報告と、教室や授業等を通し、危機や困難と向かい合い悩み格闘しながら生きる教師たちの、『いまここで起きている教育的現実』を、どう見るか、そこにある可能性の見方や人間的でありつづけることを支えるものとして何が求められているかについて、提起されたとぼくは思った。

                        ※

 6時半から懇親会。ぼくは、どうもこういう場は苦手で失礼したくなる。しかし、吉益さんや北川さんがいらしたので出席する。

 8時半ころ懇親会を終えて鳴尾の駅から梅田に出た。


 北川さん吉益さんの二人が「ちょっと一杯やっていきましょう」と、ぼくを誘ってくれた。二人はこれから京都と滋賀に帰らなければならないというのに、「まだ1時間は大丈夫だ」と言って。

 ちょうどJRのガード下あたりに居酒屋街の路地があって、一軒の暖簾をくぐった。3人席がちょうど空いていた。

 それから、小一時間楽しく話す。と言っても北川さんがしゃべり続けて、ぼくと吉益さんはずっと聞き役だったかな。でも、ぼくはこんなところで大阪の夜を楽しめてよかった。二人に感謝。

 ホテルに戻ったのは、10時半。