金曜日の夕方、新幹線で新大阪に向かった。夕日が西に傾き沈んでいく。
「あれは伊吹山地かな…。いや、名古屋を出てもうずいぶん時間がたつから、比叡の山々かもしれない。すると、いま近江八幡や大津のあたりを列車は走っているのかも…」
読みかけの新書を閉じて、そんなことを考えていたら、ふと石垣さんや滋賀の仲間たちの顔が浮かんだ。
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新大阪駅17時53分着。
JR線で大阪駅へ。「まずはホテルに入ろう」
何といっても大阪駅周辺を一人で歩くのは初めて。駅周辺の全体地図がぼくの頭にない。
一旦地下道に入り阪神梅田駅を見つけてホッとする。なぜなら、翌日から始まる日本臨床教育学会の会場、武庫川女子大学に行くには、この駅から乗車するからだ。
西梅田にホテルをみつける。
「18階ですよ」と言われて、部屋の窓から大阪の街の夜景が見えるだろうと楽しみにしていたら大間違い。閉まっていた窓のカーテンを開けると隣はビル。
「残念!」と思っていたら忘れ物に気づいた。キャリーバックをチェックイン時に置き忘れてきた。青くなる、そして悲しくなる。
「18階をまたロビーまで降りるのか」
あわててロビーにかけつけると、受付をしてくれた女性が笑顔で迎えてくれた。
「お客様。お忘れ物ですね」
そう言って黒いキャリーバックをカウンターの中から取り出してくれた。
「素敵な笑顔をもらったから、よしとするか…」
一旦ホテルに荷物を置いた後、夕食をとりに外に出る。北新地が気になってそこまで歩いてみることにした。
串カツ屋さんとか焼肉屋さんとか、いろいろな居酒屋がいっぱい。
ぼくは、ここは見るだけにして駅近くのとんかつ屋さんにより、グラスビール一杯で食事。
厨房から、少し覚束ない日本語で「いらっしゃいませ!」「ありがとうございました!」と繰り返し繰り返し、男性の声が聞こえる。働きぶりを見ていると笑顔を絶やさない。皿洗いをしたり、皿の準備をしたり、とても忙しそうだが、何だかすごく一生懸命で、胸が熱くなる。
ぼくは、カウンターに座ってゆっくりと食事を楽しんだ。
「お変わりは如何ですか」
「キャベツをどうぞ…」
店内はいっぱいの客で混んでいたのに、二度も別の女性店員が回ってきて声をかけてくれる。ぼくはお変わりをするほど今は食べられない。かえって恐縮してしまった。それで言った。
「じゃあ、キャベツをいただきます!」