3年のゼミ生たちと読み合っている本は、拙著『パニックの子、閉じこもる子達の居場所づくり』。出版社は学陽書房。2001年3月の発行。
副題は『受容と共感の学級づくりで彼らは甦った!』
今日、生きづらさの中で多様な表現・表出をする子どもたちを前に、その子たちをどう理解するか。そして、豊かで人間的な学級をつくりだすために、いま何が必要か、その実際をぼくなりに具体的な学級の活動をとおして記述してみた。
編集者で大変お世話になった故・藤井雅子氏から、執筆に当たり次のようなお話があった。
≪班づくりや討議づくりなどを始め、学級づくりの本はいろいろ出版されています。それとは違った先生らしい内容の本を書いてください≫
そんな中の後半の一節に、子どもと創り出す遊びの世界を描いた部分がある。
今日のゼミの時間は、その部分の一部、『振り付けコンクール』と『学級祭り』を読み合った。
コンクールといっても順位をつけたりはしないで表現を楽しみ合う活動。
この文化的ともいえる一つの表現活動を教室に取り入れたのは、教師になって10年目くらいからか。学級祭りはずっと続けてきたが…。私的グループと公的グループの両者を大切にして、子ども世界を楽しい身体表現を創り出しながら新たな関係性のなかでつなげ合うようにしていくのがぼくのねらいだった。
毎回トラブルが出ることは覚悟の上だったけれど、必ず新たな楽しい表現活動が生まれていった。ここには確信を持った。子どもたちが踊り出すと、楽しい。
学び合った後、ゼミの終わりにぼくは言った。
「ちょっと踊ってみようか?」
「えっ!」
みんな、少し不安そうな顔。でもやるんだよね。ぼくは、けっこうこういうことはヤンチャだからね。
8人のメンバーとぼくとで、最初は『チックサック・コール』。
「いいかい、ぼくの声に合わせてね」
結構みんな知らないみたいだから、一度、やってみせてから、次はK君が円陣の真ん中に立ち膝で構えてコールの中心になった。
激しく燃え上がる声がゼミ室に響く。
「これはね、例えば他のクラスとの闘いの前なんかに団結の気持ちをこめてクラスみんなで叫ぶんだ!」
続いて挑戦したのが、『モグラ祭り』と『ハイスカズンバ』。
子どもたちは、一学期最後の終業式の日に、あゆみをもらった後、「先生、あれやろうよ!」とせがまれて叫んだ。夏の熱い教室の中で「♪ハイスカズンバ」を踊り狂った。みんなぶっ倒れて、悲鳴をあげて床に寝転がった。ぼくのお腹の上にも、子どもたちがわんさか乗ってきて。
♪も~ぐらの~ ま~つりは く~らやみ ま~つり~
8人のゼミ生がモグラになってゆっくりと回転し、それから激しく踊る。
踊る、踊る。
ああ、懐かしいなあと思った。ぼくは、いま子どもたちとはできない。でもゼミ生たちが、きっとこのバトンを引き継いてくれるのではないか。それを楽しみして学生たちと今を遊んでいる。
ゼミ室にいらした宮下先生が笑って言った。
「懐かしいね。これは、やり出すと終わらないんだよね」
「えっ、中学でもやりましたか」
「大学の寮でね、やったの。もう爆発するみたいにね!」
爆発的な踊りを楽しんでいたら、ゼミ室のドアがあき、4年のSさんが入ってきた。「先生、私たちもやりたい!」
「そうだよね。このハイスカズンバを実際にやってみせたのは、今回の3年生が初めてだったから…。ごめんね。よし、こんどみんなでやろう。夏の花火大会なんかしてさ、その暗闇や炎の中でやると楽しいよ」