「先生、鍋パーティをしましょう!来週の水曜の夜、空いていますか」

 先週の3年ゼミの時間が終わったとき、みんなが言った。

 「君たちとは、まだ飲んだり食べたりしてないね。いいよ。OKです」

 

 水曜の5限、「生活指導論B」が終わってゼミ室に帰ると、「先生、用事のできた人もいて全員は集まれません」とちょっと残念そうにMさん、Aさん、Yさんが言った。

 「それと鍋とガスコンロがありません」

 「…!」

 思わず笑ってしまった。鍋パーティどころじゃないね。

 「よし、外に食べに行こう!」「イェーイ!」

 あれれ、凄くうれしそうだ。


 「ピザとかパスタはどう…?」「賛成でーす」

 時刻は6時半。外にでるともう真っ暗。ワイワイ言いながら大学の坂道を下っていく。

 パスタの店の前にきて中をのぞくと席がない。

 「仕方がない。じゃあラーメン屋に行くか」「イェイ、イェーイ!」

 みんな、なんでも楽しいみたい。


 目指すラーメン屋を恐る恐る覗くと、予約席でうまっていて席がない。がっかり。でも素敵な店員さんが予約席をちょっと工夫して、「こちらに座りませんか」

と、わざわざ用意してくれた。

 「ありがとう!すごく感謝するよ」


 席に着いてAさんが言った。

 「やっと念願が一つ叶いました」

 「何…それ?」

 「先生とゼミのみんなで食事に行くのが夢だったんです」

 Sさんは、さらに詳しく語った。

 「先生のブログを1年生のころ(あれ…2年生だったかな)から読んでいたんです。それでゼミ生とラーメン屋さんに行ったことなんかが書いてあったでしょ。わたしたちも行きたいなあと、前からずっと思っていたんです」

 うれしいこと言ってくれるね。ぼくも、ちょっと感動。


 みんなで好みの食事を注文して食べ終わったとき、支払いをしようとしたら店員さんが笑顔で近づいてきてぼくの前に立つ。がっちりとした強き姿の若者だ。

 「山崎先生、ぼく、木曜の5限の授業で先生のお話を聞いて感動しました」

 「えっ、君は都留の学生なの。木曜の5限か。学校教育基礎論だね。…ここでバイトしているの」「はい!」

 「じゃあ、頑張るんだよ…」

 また、思わぬところでうれしい一言をいただいた。

 都留にいると楽しい。どこで誰にあうか、いろんな人たちに会うんだね。


 食事後、ぼくは宿泊のための荷物をぶらさげながら大学会館へと向かったけれど、Mさんの帰り道が一緒で、踏切を越えてしばらく一緒に歩いた。

 「都留の秋の夜はグンと冷えるね」なんて言いながら…。


 そうだ、ゼミ室を出て暗闇の中をぼくがリュックを背負って歩いていたら

「びっくりした。先生がアコーディオンを背負っているかと思った」

 何て言われてしまった。