『二分間の冒険』と言ったら岡田淳さん。

 この物語を子ども時代に読んだ人も多いだろう。


 ぼくは、高学年の教室で、少しずつこの本の読みきかせをした。学級文庫の棚に入れておくと、いつのまにか本は棚から消えて、子どもたちの机の中を行き来した。

 

 岡田淳氏は現役の図工教師。同時に児童文学をたくさん書き続けてきた。

 心躍り、不思議で楽しい物語がいっぱい。偕成社文庫で出版された本はほとんど教室に置いた。


 その岡田潤氏が、図工教師としての日々を、子どもたちと生きる日々をエッセイに書いて出版した。題名は、『図工準備室の窓から―窓をあければ子どもたちがいた』(偕成社刊)。

 一日で楽しく読んだ。子どもの見方が素敵だ。そして、ちょっとホロリとさせられるところもあって。


 職員室で共に生きる仲間の姿も暖かく描かれている。

 図工準備室に飾られた試作品が口絵写真に掲載されている。準備室を、子どもが覗きたくなるような秘密の生まれる場所、物語の始まるような場所にしているところも楽しい。

 ふと、思い出す。

 ぼくの出会った何人かの図工教師も、こだわりの世界をそれぞれが持っていて楽しかったなあ。


 岡田氏が図工教師になったころ、同僚との帰宅途中、ひとりの少女の家による。少女が家から素足で出て来る。その姿に、岡田氏は図工室で見ていた子どもたちすべてに深い色合いや匂いのある生活があることを発見する。そのくだりがいいなと思った。そんな思いをしながら最後まで読み切った。