渋谷からタクシーに乗り赤坂のTBSの近くの式場に向かった。
親族の集合時間に遅刻しそうだ。
「何分かかりますか」
「20分かな」「…。」ちょっと不安になる。
走り出したらタクシーの運転手さんが「大丈夫です。3時5分頃には着きます。スピードをあげていきますから」
「いえいえ、安全運転でいいですよ」と、ぼく。
運転手が笑った。
「スピードをあげますが、安全運転で行きましょう」
甥っ子の結婚式があった。
彼と結婚する相手は陸前高田の生まれ。震災と津波の被害があって、結婚式を1年半伸ばした。本来なら、東京で式をあげたあと、先方の親族を中心とする披露宴を仙台で実施する予定だった。それにも出てほしいと言われていた。やっと式をあげられたことをうれしく思う。
式場につくと甥っ子の父親(ぼくの弟)が、式場のスタッフに言っていた。
「一番近い人が一番遅く来ました」
若い二人は現在福島に住んで仕事をしている。
小さなやんちゃ坊主のころから彼を見ていたから、何とも不思議な感じ。ここにまた一つの家族が生まれたということ。
新しい世代がこうして少しずつ生まれ重なりながら入れ替わり続いていく。
昔、やっと大人になったころ、父や母に似ている人たちを見て、あんな叔父さんやおばさんがいるんだと思っていたが、いまぼくらはそうした位置にいる。