ゼミ生たちの幾人かが、いま教育実習に飛び出している。中学へ。

 「どきどきするなあ」「心配だなあ」

 不安を口にするけれど、なんだかその言葉には煌めきがある。期待と希望が彼らを深いところで支えているんだ。

 これが、未来をつくり出す若者の力だ。

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 先週は、Hさんが鹿児島の中学から帰ってきた。

「楽しかったよ」と言いながら、笑顔が輝いている。

 今週は、Kさんが新潟から帰ってきた。

「すごく楽しかったです」

 ぼくは聞いた。

「いったい何が楽しかったの?」

「ええと…。何といったらいいのかな。中学生と心つなぎ合うことができたんです。悩み事相談とか、いろいろふだん話せないことをいっぱい話してくれました。ちょっとお姉さんみたいな感じだったのかな。中学もいいな…」

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 いま、数人のゼミ生が中学校への実習と小学校への実習に出かけている。

 実習の日々は、悪戦苦闘だろう。でも、すごくすごく人生の宝物になるに違いない。頑張れよ!と思う。

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 Mさんは明日から中学校で実習。実習生5人を代表して挨拶するとのこと


 3年生も頑張っている。来年の実習先をいま決めなくてはならない。みんな地元の母校に直接交渉し電話する。これが偉い。

 3年のMさんは、H県の母校に電話した。

 教頭がでる。中学校は少し荒れているみたい。面倒くさそうな声で冷たい言葉が返ってきたという。

 それを聞いたMさんは、言葉につまる。すると教頭は言ったという。

「教師にむいてへんとちがうか!」

 Mさんは、涙をこらえてお願いするがよい返事はもらえない。

「わたし、それでここしかないからもう一度電話してお願いしました。私が涙ぐんでいるのがわかったのかもしれないけれど、『あなたのくる枠はとっておいたから』と答えてくれました」

 辛かったのに、よく二度電話したねとぼくは言った。


 全体的には、全国の学校が実習生の受け入れについて暖かな対応をしてくれる。だが、中にはMさんのような対応もある。厳しい中で生徒たちの教育に奮闘されているのはわかる。でも、この若い学生たちを、その中学生たちと出会わせることで、何か未来を切り開く大切な機会にしてくれないかな…と思う。