朝から雨。卒論発表会に出られなかった3年生のKさんに電話した。

 「元気になりましたか」

 電話の向こうが少しざわめいている。

 「これからカナダに出発です。いま都留の大学の前にみんな集まっています」

 「そうなんだ。出発は今日か!気をつけて行ってらっしゃい」

 高いビルに囲まれたバンクーバーの街並が突然目の前に浮かんだ。坂道の向こうに白い雪を抱いた山が見える。懐かしい。あそこに出発なんだ。

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 一日、机に座ることが多かった。午前中は、昔の学級通信を引っ張り出して調べていた。院生のGさんに最近のものは渡したままだから、どこかに元原稿はないかと…。

 明日、霜村さんの学校の校内研修の授業研究会に出席する。そのときの資料になるかな…と思って。

 それから、原稿にとりかかる。一度執筆したものを、取り寄せられたほかの人たちの原稿を読みながら、書き直す仕事。これは少しきつい。集中力が持続しない。回転しない頭がいっそう固くなっていて、呪いたくなる。

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 大学への速達を出した後、戻ってみると、品川支部でお話をした参加者の感想文が郵送されていた。会を主催したAさんのいつもの丁寧なご配慮。うれしく読む。

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 そうこうしていたら夜の7時頃、カナダへ旅立つHさんから電話が入る。

 「おやおや、いまどこにいるの。まだ成田ですか…」

 「はい、もう出国手続きは終えて、出発までぶらぶらしています」

 「お金はドルに換えましたか」「はい…」

 「楽しい旅になるといいね」

 「もう、どうなるか不安ですけど…。ちゃんと帰って来られるといいけど…」

 「それは大丈夫だよ。かけがえのない思い出になりますよ」

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 雨の一日だったけれど、午後から電気屋さんに来ていただいて新しいエアコンを取り付けてもらった。ベランダの外に出たり、内部の古いエアコンを取り外したり、3時間近く仕事を続けている。寒いだろうにね。

 懇意にしているので、ちょっと電気器具の調子が悪くなると電話一本で駆けつけてくれる。いつも笑顔を絶やさないで気持ちよく仕事をしてくれる。

 暖かな空気が流れる椅子の上で猫のライラが「いい場所を見つけた」と丸くなって眠っている。