都留で朝を迎える。空気が凍るように冷たい。気温は零下3・4度。

 数日前に、雪がたっぷりと降ったから、歩道も周りの木々もまだたくさんの雪のかたまりを残している。

 時刻は午前7時。宿舎を出ると、向こうから子どもたちが5・6人楽しそうに歩いてくる。 小さな女の子や6年生くらいの男の子も。 耳あてをしたり、マフラーを首にまいたりして…。

 ピンクのジャンバーを着た女の子が、小さな氷を蹴りながら歩いてくる。「カラカラ」と地面をすべる音。

 後ろから男の子が走ってきた。大きな丸い氷の塊を抱えている。

「わあ、あれは樽かバケツに出来た氷だ!」

 厚さ5センチは越えている。学校に行って友だちや先生に見せるのだろう。

 なんだか楽しくなる。ぼくが教師だったら教室で大喜びして大騒ぎだ。

                       ※

 4年生のゼミはきょうでおしまい。さみしくなる。

 午後は3年生のゼミ。1時10分。授業開始。

「ねえ、みんな、どうしたんだろう。今日は少ないね。みんな部活のアルバムの写真でも撮っているのかな…」

 寒さで体調を崩したかな…。4・5人しかいない。すこし心配になった。

「よし!じゃあ、いる人たちでゼミを始めていようか」

 Hさんがこの1週間のお話をして、次にKさんになったときだ。

 ドアが「バタン」と開いた。

 そこには、半分のゼミ生が一度に顔を並べている。

 このときぼくは、みんなは何か特別な用があって遅れてきたのかと思っていた。

 すると…。みんな一斉に歌いだした。

「♪ハッピバースディ、テゥーユー♪…」

 えっ、1月の誕生日のお祝いか。いったい誰だろう。にこにこ!

「先生、お誕生日おめでとうございます!」

「わあ、ぼくか!…ありがとう。まさか…。びっくりしたよ」

 何と、それはぼくの誕生日を祝って、3年生たちがイベントを計画してくれたのだ。

 感激しながら、いただいたプレゼントを開ける。

「わあ、お菓子か!あれ、アイスクリーム?」

 みんな爆笑。

「先生、それは…」「ああ、お風呂の石鹸か」

 『ラッシュ』と書いてある。

「これで疲れをとったりお肌をきれいにしたりするんだね!ぼくもますます美しくなっちゃうね」

 また大笑い。可愛い犬のマークのある手帳に、ゼミ生みんなからのコメントが書いてあった。いつの間に書いたののだろう。うれしくて感激した。